うたぷり

□どうしようもない程キミが好き:一十木音也
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「僕らも何かしよっか?…あ、この間できた音くんの曲に詩でもつける?」




水月は俺へそういって、俺のために作ってくれた曲の譜面とルーフリーズを取り出した。

水月のその考えに、俺が強く頷いてみせると、ちょっとうるさかったのか「音也、少しでいいですからトーンを落としてください」ってトキヤに言われちゃって…。

そんな俺を水月が苦笑いしながら見てた。




「怒られちゃったね」




ふふっと困ったように笑う水月にドキッと胸が跳ねる。
そんな水月に、俺は紅潮する頬を半ば無理やりニカッと笑って誤魔化すしかできなかった。





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「ここはもう少しこうしたほうが…、でもそうするとこっちが繋がらなくなるのか…」




しばらくして、水月は俺の書いた詩と、自分の書いた楽譜を見合わせて音の調整をしていた。
俺はというと、特にすることもないので、その真剣な横顔を眺めていた。
トキヤよりも薄い色素の水色の髪は、儚い印象を受け、消えてしまいそうなほど…。


―まつげ、長いなぁ…。


水月の横顔を眺めて、ごく単純なことを考えていると、ふと水月と視線が交わった。




「どうかした?音くん」




不思議そうに聞いてくる水月に「なんでもないよ〜」といつも通りを装って返事をするも、心臓はバクバクしてる。




「(俺、水月に見とれてた…)」




やっぱり好きだな、と心の中で呟けば、せっかく熱の引いてきていた顔にまた熱が集中するのがわかる。


それと同時に自然とニヤけてしまう口を軽く隠しながら、チラリと机に向き直って作業を再開している水月を盗み見れば、日に透けてキラキラと綺麗なまつ毛に、大きな目、少し幼さが残こってはいるものの、整っている顔が見えた。




―あ…、




顔を見ただけなのにドキドキと胸が鳴る。

たったこれだけの事なのに、騒ぐ胸はそろそろ好き≠ニいう気持ちを隠してくれそうにない。


たまに交わる視線に微笑んで返しながら、いつこの気持ちを伝えようかと考えて、俺は水月が曲のチェックを終えるのを待っていた。






―FIN―
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