【END and RE:TURN】
□因縁
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昼、2-A教室―
「起動実験、今日よね…」
「うん…」
二人の周りには深刻な空気が漂っている。
「何や、また夫婦喧嘩かいな?」
「…鈴原、ちょっとは空気読みなさいよ。」
そう言って、トウジの耳をつねる委員長。
「イタッ、イタいわアホっ!?
何すんねんっ!?」
「…どうみたって、喧嘩どころじゃないでしょ。
…たぶん、そろそろ破局よ。」
「は、破局っ!?
ホンマかいなっ!?」
「たぶんね…」
…意外と委員長とトウジは似た者同士なのかもしれない。
それ故、互いに惹かれる所があるのだろう。
「碇君、アスカ…」
二人を遠くから心配そうに見つめるレイ。
もちろん、彼女は3号機の件を知っているため、ずれた勘違いはしていない。
「…3号機に何かあるの?」
二人はまだ、綾波に全てを話してはいない。
以前シンジが、彼女の出生の秘密を知っていることを、暗に明かしたきりである。
「…二人は、何を知っているの?」
*
放課後、2-A教室―
「…結局、何も起こらなかったわね?」
「うん、このまま何も無ければいいんだけど…」
「碇君、アスカ…」
「綾波…?」
話し掛けてきたのは、レイだった。
「どうしたの…?」
「二人は―」
「…?」
「―何を知っているの?」
沈黙。
(もう、潮時かな…)
隠し通せるのも、もう限界が近づいている。
彼にしても、理由も無くただ黙っていた訳ではない。
―彼は、不安だったのだ。
事実を知ったところで、彼女が傷付くだけではないのか?
そして、それを知って果たして彼女は平静を保っていられるのだろうか?
―シンジには、分からなかった。
しかし、彼女に知る権利があるのも事実。
彼女が知りたがっている以上、教えるべきであるのは明白だ。
(でも、それでいいのか?)
そういった考えが、彼の頭の中で、無限ループの様にぐるぐると回っていた。
「…教えましょうよ、シンジ。」
沈黙を破ったのは、アスカだった。
「アスカ…」
「…アタシだったら、自分のことを自分が知らないなんてイヤだもん。」
「…ありがとう。」
「え?」
「…僕だけだったら、ただ悩んで、それで終わってたから。」
「シンジ…」
そして、シンジは腹を決めた。
「…綾波、全てを話すよ。
でも―」
「…?」
「―辛かったら、その時は言ってよ?」
「…ありがとう。」
「うん…、僕たちは―」
その時、三人の携帯が教室に鳴り響いた。
「…シンジっ!?」
「…くそっ!?」
―結局、繰り返すしかないの?
「…綾波、この闘いが終わったら、全てを話す、約束する。」
「…分かった。」
「…ごめん。」
そう言って、三人は走り出した。