【END and RE:TURN】
□帰還
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(…ここは、どこだ?)
気付いた時、シンジは暗闇にいた。
いや、「いた」のではない、シンジは暗闇そのものだった。
(…碇君。)
(綾波…?)
ぼんやりと伝わるレイの存在。
(この感じ、どこかで…!?)
以前、初号機に取り込まれた時に感じた、あのひどく心地よい感じ。
すべてが一つになった時に感じた、どこか虚しい感じ。
(…赤い海、赤い空、横たわっているのは、アスカ…?)
(どうしてそれを…)
動揺するシンジ。
(碇君から伝わって来るもの…)
(…そうか、あの時僕と綾波はLCLに溶けて…)
(…碇君、教えて。
私が感じたあの世界は、いったい何?)
(…分かった、すべて伝えるよ…)
そう伝えて、シンジはこれまでのことをイメージし始めた。
(…この方が分かりやすいでしょ?)
(えぇ…)
そして、レイはシンジのイメージの中に入り込んでいった―
*
―しばらくして、レイから苦しみが伝わって来る。
(綾波…)
(大丈夫…、世界は一回終わっていたのね…)
(うん…、僕が最初から逃げ出さずに戦ってれば、違う結末だったのかもしれない…)
(辛かったのね…)
(うん…、でも、またみんなと逢えて嬉しかったりもしたんだ…)
(そう…)
(…綾波も、辛かったんだよね…)
(…えぇ、辛かったわ、とても…)
瞬間、シンジの頭にレイのイメージが入って来る。
―レイは生まれてから、造られてから、ずっと孤独だった。
リツコからは実験材料のマウスの様に見られ、ゲンドウからは失った妻を自分の中に見られ―
―誰も、彼女の本質を見ようとはしなかった。
(…ごめん、今まで気付けなくて…)
(違うの…)
(え…?)
(今は違うの…)
そして、再び入ってきたイメージはさっきの孤独なそれではなく、温かいものだった。
彼女の周りには、シンジが、アスカが、ミサトが、リツコが、ゲンドウが、トウジが、ケンスケが、ヒカリが―
―みんながいた。
(碇君が、教えてくれた…)
(綾波…)
(私はもう、孤独じゃない…)
彼女から、木漏れ日の様に温かいものを感じたシンジ。
(…良かった。)
(ありがとう…)
(うん…)
そして、二人は再び意識を手放した―