【END and RE:TURN】
□記憶
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NERVがゼーレと手を切り、補完計画を中止した―
そのことがリツコから聞いたミサトにより、シンジたちの耳に入るまで、時間はかからなかった。
「信じられない…、あの父さんが母さんを諦めたなんて…」
驚きを隠せないシンジ。
「あの司令がねぇ…」
そう呟くアスカ。
―アスカは学校が先の戦闘で臨時の休校となり、シンジが入院している今、一日のほとんどをNERVで過ごしている。
「…司令はシンジ君、あなたに今を生きるということを教わったと言ってたらしいわ。」
「父さん…」
シンジの瞳が静かに揺れる。
「伝わったのよ…、あなたのその強い意志が。」
「良かった、本当に良かったです、ミサトさん…」
シンジは震える声でそう言った。
「…感動してるとこ悪いんだけど、これからNERVはどうなるわけ?」
もっともなことを聞くアスカ。
事実、NERVはゲンドウの計画の為に動いていた様なものなのだ。
もちろん、職員たちにその自覚があったのかは定かではないが。
「おそらくは対使徒、対ゼーレ組織としてやってくことになるでしょうね…」
そう言うミサトの顔は険しい。
「対ゼーレ…、使徒より厄介ね。」
顔をしかめるアスカ。
「それに、今まであの組織の援助があったから、NERVがここまで力を手に入れた様なもんだからねぇ…、これからのことを考えると本当に頭が痛いわ…」
ミサトはそう言って苦笑する。
「…ミサトさん、一つ聞いていいですか?」
「なぁに、シンジ君?」
「2号機は真希波とアスカのどっちが操縦するんですか?」
「もちろんアタシよっ!?
何てったってアタシの2号機なんだからっ!?」
胸を張って断言するアスカ。
「アスカは2号機以外に乗るつもり無いものね…、マリには新しい機体が出来るまで予備として待機してもらうわ。」
「そうですか…」
「何よ、なんか不満でもあんの?」
食って掛かるアスカ。
「ううん、ただ…」
「ただ?」
「…退屈だろうなって思ったんだ。
エヴァに乗ってた時の真希波、すごく生き生きとしてたから…」
「ふーん…、でも2号機にあのピンクのプラグスーツは似合わないわ、絶対。」
「じゃあマリの新しい機体のカラーリングはピンクで決定ね?」
その時、警報が鳴り響く。
「アスカ…」
「大丈夫よ、アンタは休んでなさい?」
「うん…」
「…ほら、目をつぶって、シンジ?」
「?」
言われるままに目をつぶるシンジ。
「…!?」
唇に何か柔らかいものを感じ、思わず目を開く。
目の前にあるのはアスカのまぶた。
急に真っ赤になるシンジ。
「…約束のキスよ。
帰ってくるって約束のね?」
頬を染めて小さな声で話すアスカ。
「青春してるわねぇ…」
それを見てニヤリと笑うミサトであった。