【END and RE:TURN】

□生命
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「―そろそろ時間かな…」

「そうね…、結構楽しかったわね、シンジ?」

「うん、色々と勉強にもなったしね。」

「バカシンジのくせにぃ?」

「もぅ、からかうなよぉ…」

夕焼けが二人を橙色に染め上げる。

今、二人は赤い海を眺めていた。

「…二人とも、ちょっと、いいか?」

そう言って、加持は二人の横に立つ。

「何ですか、加持さん?」

「…すまないな、えげつない真似をして…」

「……」

瞬間、黙り込む二人。

「…シンジ君、俺がどうしてこんなことをしたか、分かるかい?」

「…生命の価値を教えるため、ですか?」

「あぁ、それもある。
でもな、それだけじゃないんだ。」

「…?」

「…二人には、今を生きている、それを知って欲しかったんだ。」

「…今を、生きている?」

「あぁそうだ、アスカ。
俺から見た君たち二人は、どうも過去に生きている様に見えたんだ。
間違ってはないだろ?」

「…はい。」

小さな声で答えるシンジと、コクリとうなずくアスカ。

「でもな、世界は今も動いている。
もちろん、君たちが経験した様に、世界は一度終わったのかも知れない。
それでも、止まることなく、動き続けているんだ。」

そう語る加持の瞳は、どこか遠くを見つめている。

「…君たちが、過去に囚われるのも分かる。
こう言う俺も、葛城も、そんなもんだからな。
だがな―」

そう言って、二人に顔を向ける。

「―君たちには、過去に取り残されて貰いたくない。
だから今日を、新たな船出の、きっかけにしてもらいたかったんだ。」

勝手だよなと言って、微笑む加持。

「うっ、ううっ…」

静かに二人の頬を伝う、一筋の雫。

「…今日は好きなだけ泣けばいい。
誰も、君たちを、責めはしないさ。」

「う、うあああああああああああぁぁぁ…」

誰も、君たちを、責めはしない―

―その一言で、今まで閉じ込めていた感情が一気に溢れだし、夕日を浴びながら、静かに泣き崩れる少年と少女であった。









続く
  
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