【END and RE:TURN】
□帰還
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輸送ヘリ内部―
「酷い有り様ね…」
ため息混じりに呟くミサト。
上層部は跡形も無く消し飛ばされ、内部も機械の部品などが、あちこちに散乱している。
「…感傷に浸ってる場合じゃないわよ?」
そう、無表情で呟くリツコ。
「…えぇ、分かってる、分かってるわ。
まずはシンジ君とレイを救出しなくちゃね…」
そうミサトは自分に言い聞かせた。
*
「完全に沈黙してるわね…」
「…内部モニターから見て、二人はおそらくLCLに溶けてしまったみたいだわ。」
「前にシンジ君が言ってたのと同じね…、じゃあ、早く運びましょうよ?」
「そうね…、じゃあカヲル君、頼むわ。」
―分かりました。
そう言って銀髪の少年は作業を始めた。
*
時は初号機が沈黙した直後に遡る―
「―あれは、エヴァ…?」
空を見上げながら呟くミサト。
そして、舞い降りて来た白銀の巨人。
「Mark.06…、噂では聞いていたけど、もう開発が終了してたなんて…」
「誰か出てきます…」
そして、エントリープラグから一人の少年が降りてくる。
「赤い瞳…」
その色素が脱けたような白い肌、そして真紅の瞳は、あまりにもレイと酷似していた。
「…何者なの、彼は?」
そう言って少年を見つめるリツコ。
そして、少年がこちらに気付く。
「…何?」
微笑みながら、こちらに近づいてくる少年。
そして、彼女たちの目の前で止まる。
「…初めまして、ミサトさん、リツコさん、マヤさん。」
「な、どうして…」
突然名を呼ばれ、驚くミサト。
「NERV本部の作戦部長、技術部長、そしてその右腕とも言えるオペレーター…、知らない人はいませんよ?」
淡々と喋る少年。
「…あなた、何者なの?」
警戒を解けないミサト。
「渚カヲル…Mark.06のパイロットです。」
そう言って再び微笑む。
「カヲル君ね…、それで、初号機に何をしたの?」
カヲルを睨みながら問うリツコ。
「そんなに恐い顔しないでくださいよ?
ただ活動を停止させた、それだけですから。」
「じゃあシンジ君とレイは無事なのね?」
「はい。」
「良かった…」
途端、安堵するミサト。
「一つ聞いていいですか?」
「…何かしら?」
「アスカさんはどこに?」
「…ここよ。」
瓦礫の影から姿を現すアスカ。
「アスカっ!?
いつ病室から抜け出して…」
「…アンタ、渚カヲルね?」
「…その様子だと君は僕を知っているみたいだね?」
「…えぇ、アンタも知ってるんでしょ、あの赤い世界を?」
「…ご明察。」
「やっぱりね…」
遠くを見つめるアスカ。
「そういうこと…」
状況を把握したリツコ。
「先輩、あの二人は何を…」
何のことか分からないマヤ。
「あなたには後で話すわ…、二人とも?
邪魔なら私たちは向こうに行くけど?」
「お願いします。」
微笑むカヲル。
「分かったわ、さ、行きましょう?」
「えぇ…」
「はい…」
―納得できないミサトと、訳が分からないマヤだった。