特命

□優雅な一日
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「おはようございまっす!」

「おはようございます」


俺は、入り口にある、自らの名前の入った札をひっくり返す。
だいぶこの特命係にも、慣れてきたところだ。

…今日も、上司の杉下さんは、無言で紅茶を楽しみつつ、一人でチェスをしている。

───よく一人で出来るよなぁ…。というか、こんな変人上司に慣れちゃった俺もアレだけどさ。

「おう!暇か?」
「あ、角田さん。見ての通り暇ですよ」

角田さんもいつも通り、勝手にコーヒーをついでいる。

「んお?警部殿は、いつもの一人チェスですかー。カイト、相手してやったら?」
「俺!?いや、無理ですよ。勝てる気しませんもん」
「んー。まあ、確かになー」

「カイト君…お相手していただけるのですか?」
「え!?嫌ですよ!」
「君は、上司の頼みもきけないんですか?」

杉下さんは少し楽しそうに、眼鏡の上から覗いてくる。

「あ、あー!俺!ちょっとトイレ行ってきます!」

この場所にこれ以上留まるのは、無理そうだったので、俺はトイレに逃げた。

「ふぃー。んだよ。チェスとか無理だし」
「お?カイトじゃん。どしたの?」

横からひょっこりと顔を出し、俺の名前を呼んだのは。

「あ、芹沢さん。どうも」

いきなりの呼び声に驚き、そっけない返事を返してしまった…。

「おう!なあ、カイト、さっき独り言呟いてたけど…。疲れてるんじゃない?まあ、確かに杉下警部のお世話は大変かもだけどさー。ちゃんと休みなよ?」
「なにいってるんすかー。俺ちゃんと休んでますよ?」

そういうないなや、芹沢さんは俺に顔を近付けてきた。

「ーーー!?ちょ!何ですか!芹沢さん!」

芹沢さんは、ニヤリと笑みを浮かべ、俺を見つめてくる。

「俺の家に住めば、毎日体調管理してあげるのに…」
「は、はぁぁあああ!?」

な、なに言ってんだ!!この人!

「じ、冗談だよ!冗談!!」
「冗談か…よかった。」
「ちょ!!ほっとしないでよ!悲しいから!!」

…この人もかよ。

俺は、本気で肩を落としている芹沢さんの横をそっと立ち去った。
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