特命

□エースと新人
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「コルァ!!!特命係がなにかご用ですかぁー?」
「これはこれは、伊丹刑事。どうも。」
「あ、伊丹さん、どもー。」

現場に杉下と甲斐がいることに気付いた伊丹が、鬼のような形相で此方にやって来た。
この事件は、なんでも、杉下曰く、興味がある。そうだ。


「チッ…ったく、現場は荒さないでくださいよ。」
「ええ。そのようなことはしませんよ。」

珍しく、捜査一課のエースの許しを頂き、現場を調べ回る。

「あ、杉下さん。これ、なんすかね?」
「タイヤの泥の跡のようですねぇ。」
「え、でも、ここら辺に土があるところって…。」
「ええ。ありませんね。それに、これまでハッキリ泥が残るということは、そうとう地面が湿っていた、ということになりますね。しかし、ここ最近雨は降っていませんし、この辺りには水辺もありませんからねぇ。恐らくは、別の場所で殺された…ということでしょう。」

すると、捜査一課のエース、伊丹が首を突っ込んできた。

「んじゃあ、この土は殺害現場の物ってことでいいんだな?…おい!米沢!」
「はい、ただいま。」


その間に、享と杉下は別の場所を調べていた。

「…うわあ、なにこれ。」
「恐らく、老朽化した鉄パイプでしょう。カイト君。危ないからさわらない方が…ぁ。」
「いってぇ…。もっと早く言ってくださいよ。あー、血ぃ出てきたぁー。」

傷は見た目よりも深く、赤黒く染まった血が留まることを知らない。

「どなたかに、応急処置を任せましょう。…すみません。どなたか、絆創膏などを持っていらっしゃいませんか?」


落ち着いて、声をはる上司を横に、享は血が回らないよう、脈を押さえ座り込んだまま、腕を高く挙げる。

しばらく、そのままでいると、その腕が引き寄せられ、何か温かいもので包まれた。

「ーーっ!!」

「…大丈夫か?」
「あ、はい。」

そういいながら、声の方を振り向くと…。


「ーーーー!?い!?」


ペロリと舌で傷口を覆っている、伊丹が目に入った。


「んご?…どうひた?」

享の指をくわえながら喋るので、もごもご言っている。享が驚愕している表情を見て、首をかしげた。


「?」
「ちょ!!血ですよ!?」
「ああ、知ってる。」

「カイト君、絆創膏をいただきました…。おやおや、伊丹刑事の方が一足早かったようですねぇ。」

そこに、突然、杉下が戻ってきた。
享は、焦って伊丹を見るが、伊丹は整然とし、杉下から絆創膏を受け取る。

チュパッ…っという、卑猥な音をたて、伊丹の唾液が糸をひくのもかまわず、傷の手当てをしていく。


「伊丹さん…。」
「じっとしてろ。」

「…あの。」
「今日、帰りに、一課に寄っていけ。…絶対だぞ。」
「え…あ、はあ。」


そう、そそくさと一言だけ告げ、伊丹は現場に戻っていった。

「今日の聴き込みは、少しだけにしておきましょうかねぇ。」

杉下は、享と伊丹を交互に見て、そっと微笑んだ。

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