黒バス

□黒子くんの光になりたかった紫原くん
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   「ぼくは、弱い.....彼を、独りにしてしまったんです」


  嗚咽交じりに苦しいことや悲しいことを吐き出す目の前の影は、そのうち自分を非難しはじめた。
本当は「違う、そうじゃない」って否定したい。「君はいつもアイツのことを考えて、自分の心さえ犠牲にして頑張っていた」って慰めたい。

それでもごめんね黒ちん。俺はそこまで優しくないんだ。
ずっと君の光になったアイツに嫉妬してた。
俺の方がずっと前から君といたのに、側にいたのに、一緒にバスケしてきたのに、

 君の隣で拳をぶつけるアイツを心のどこかで憎んでいた―――


俺が手にいれられなかった、否、もらえなかった場所をアイツは簡単に掴み取ったんだ。
赤ちんに何度抗議してもいつも答えは同じ。
だからいつもゴール下で君とアイツが拳を重ねるのを見ていた。
羨んで、妬んで、眩しいものを見るかのように目を細めた。

でもね、アイツの隣で本当に嬉しそうに微笑む君を見たらそんなのどうでもよくなったんだ。
あぁ、黒ちんが幸せなら、笑っていられるなら、って思えた。
そんな、俺が喉から手が出るほど欲しがったその場所をアイツはいとも簡単に捨てた。

 天才ゆえの孤独。

正直言って、熱くなって突っかかってこられるのもめんどうだしうざいと思う。
でも、そんなこともせずただ自分のチームのゴールにシュートを決められていくのを見てるだけの奴には、何でかな....イライラしたんだ。
「何諦めてんだよ、よえーなら弱いなりに喰らい突いてぶつかってこいよ」って思った。
そういえばこのことを話すと君は嬉しそうに笑ったね。
あの時の笑顔はまるでまだ二人っきりの昔に戻れたみたいですごく嬉しかった。

でも、でも、何よりも、そのことに絶望した峰ちんが君を捨てたのがどうしても許せない。
俺は誰よりも早く気付くことができた。
ゴール下からいつも見ていたその行為がなくなってきたことに、君がパスしていたはずのボールが渡らなくなったことに、その強すぎる光に影が圧倒されていたことに。
向けられていたはずの笑みはなくて、ただ前に進むだけになった青い綺麗な光は後ろで小さい体をさらに丸めて涙を流す影に気付くことはなかった。
そんな君を俺は見ていられない。
だけどごめん、慰めはしないよ。

慰めはしないけど、君にこの手を伸ばさせて?


  「ねぇ、峰ちんじゃなきゃダメ?俺じゃ、黒ちんの光になれないの?」



綺麗な空が雨を降らすなら俺が虹を架けるよ、

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