黒バス

□己が罪
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 <花(→)黒>

 !注意!
これには黒子死ネタ表現描写等が含まれています、花宮さんが花宮さんじゃないです
黒子の出番少ないし花+黒っぽい感じも、グロ系が苦手な方はもしかしたらアウトかも、それでも大丈夫な方はどうぞ!


 静寂、の一言につきる空間。

ずっと、変わらず、変化を拒むことなどをせずとも訪れないまま、過ぎ去っていく今。

夜中の静けさの中にひたひたと足音だけが聞こえる。

 誰のか?―――――――――自分のだ。

酷い吐き気に襲われているくせにやけに鮮明にものを考えている自分の、怯えたような足音。
一定のリズムではなく、ゆっくりと踏みしめて歩いていく。
一歩、一歩。それが自身の破滅に向かっていると、終焉へと自ら身を投じているとわかっていてもそれでも止めない。
夜の帳が下がった現在、月明かりだけが窓から射しこんでいた。ぎしり、と音を立てるベッドの上だけを照らし出す。

その上に居る淡い水色をしっかりと視界に捉えて、ぎゅっと鈍く光るそれを握った。唯一の武器、心の支え。硬質なそれを握り締めて見やる。
ふぅ、と一つ深く息を吐き空気を吸い込むと同時に、その静寂を今までの歩みと違い破るかのようにしっかりと進めていく。とんとん、と軽快なリズムとは違った重厚なそれは先ほどよりもそこまで広くない室内に響き、反響して耳にまで届いた。

 「...、」

ベッド脇まで近づき、僅かに動くそれに、月明かりに照らされて一瞬眩いくらいに光ったものを一思いに振り下ろす。
 ぐさっ、
嫌な、肉を切り裂く感触がリアルに伝わってきた。皮を引き裂き肉を突き、その部分からあふれ出す綺麗な鮮血に目を細める。
眉根を寄せ、限界だった嘔吐感に抵抗もせず最後にぐっと刃物を押し込めベッドに手を添えてその場に膝から崩れ落ちた。がらりと変わる視界、項垂れながら力なく床を見つめて先ほどの感触が思い出されるのを拒むように手を握り締める。長いようにも思えたその瞬間は存外僅かな間の出来事だが、余裕など最初から持ち合わせていない俺がそれを知る由などどこにもない。
はぁ、と安堵の息をつき視線を彷徨わせてベッドの上へと焦点を定めた。
水色は先刻と変わらずそこにあり、それでもその下部には自分が振りかざした刃物がしっかりと、寸分も違わず狙ったところに突き刺さっている。

「終わった、これできっと」歪みだした視界に苛立ちを募らせながらもふっと体の力を抜いた。
警鐘のようにがんがんと頭の中で何かが鳴り響き、この世界とさようならだと言外に告げてくることも気にせず吐き気と上乗せされた頭痛に舌打ちだけを零す。


 「    。    、」

 「っ!?」

自分の荒い息遣いだけが聞こえる耳に、別の、酷く落ち着いた声が届いた。あまりの衝撃にわけもわからず、ただ目を見開いてつぅっ、と背中を伝う冷や汗に気持ち悪さを覚える。
なぜ、なぜなぜなぜなぜなぜ!!!!!!なんで声が!!!俺は確かに狙いを外していない!!!!疑問とは似ても似つかないそれを吐露しようにも口は開くだけで音などなにもでない。ゆるりと、今度は自分でもどれほどの時間なのか理解しながら下げていた頭を上げた。
水色の影が目を閉じたまま、その凶器を刺したまま口を開閉させ言葉を紡ぐ。

響く声、鳴り止まない警鐘、相乗効果で体がばらばらにでもなるかのように気味の悪い感覚に包まれて取り乱すのすら忘れて聴覚と視覚だけを働かせる。

 「まだ、だめなのか.....?俺はまた、お前を殺すのか?」

徐々に部屋を満たしていく血の匂い。やけに鼻につくその匂いと、重苦しい空気が自分の体の周りに立ち込めるかのような感覚はもう限界だった。

零した言葉、やっと出たその言葉の意味なんて誰もわからない。
ただ、それでもきっとこの狂った遊戯紛いなことはまだ続くのだ。

 だって黒子テツヤは今日も生きているのだから、


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