庭球

□合図
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 「ねぇ、キスって何のためにあると思う?」

秋晴れの空は、すっかり日が沈みきり夜の訪れを告げている。俺は先輩が午後の練習で言っていた純粋な話を思い出し、ふと声に出してしまった。

 「?どないしたん、いきなり」

 「ん、桃先輩が練習中に馬鹿みたいに純粋な乙女だったから」

 「むっ・・・・コシマエ、わいと居るのに他の奴の話か?」

少し怒ったような人物は、四天宝寺中1年ルーキーの遠山金太郎。
俺のいい好敵手でもあり、まぁ...一応恋人。
そんな金太郎の反応にそれが嫉妬であると気づいた俺は、思わず笑みがこぼれた。

 「!・・・・何笑っとんねん。で、桃ちゃんがなんやて?」

無理やりにでも話題を変える様を、愛しいと思いながらも自分が体験したことを語る。

 「だから、桃先輩が海堂先輩とか、神尾さん、切原さんに『初キスはどんな味するんだろうな?』とか言ってて・・・・味はともかくとして、俺たちにとってキスって何だろう?って思って」

挑発的な笑みで問えば、相手は「来た」とばかりにこちらに近づき、顎を軽くあげさせた。

 「そんなん、エッチ開始の合図に決まっとるやろ?それ以外になにがあんねん」

さも当然のように弁論する姿は堂々たるものだ。
もう少し俺たちの年齢と言うものを考えて欲しい気もするが、俺は諦め、体の力を全て抜いて身を任せた。

 「すっごい不純・・・・」

 「せやかて、コシマエはキスだけで感じるエロい体やろ?」

自覚している事を改めて言われ、急に体が熱くなる。いくら恋人でも、流石に恥ずかしい。
...それでも距離は近くなり、思考を焼き尽くした。





 「ヤりすぎ・・・・腰痛いんだけど」

 「たった3回やんけ」

3回・・・それは金太郎の回数であって、俺の回数ではない。どれくらい喘がされただろうか?考慮するのが、とても気の遠くなるもので、考えれば考えるほど悩まされた。

 「コシマエ・・・・・愛しとるで。」

 「えっ!?」

突然の告白と、触れるだけのやさしいキス。
勿論、俺がこの一瞬の間で赤面したのは言うまでもない。
そして、たまには初めてのようなキスもいいかな?と思ったのは絶対に一生の秘密だ。

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