庭球

□振り払う手
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※短い上のリョーマの独白っぽい
 しかも暗い
 ついでに幸村が酷い





     吐き気がする。
頭が鈍器で殴られたように痛い。
全身がだるい。

あまりの疲労感に俺は冷たく徐々に体温を奪っていく床へと崩れ落ちる。
全身に振動として伝わる衝撃、
膝からついて、手で支えることもできずそのまま胴を打つ。
かろうじて頭からダイブするようなことはなかったが、変わりに投げ出された頬がジンジンして感覚がぐちゃぐちゃに混ざった。

視界の端から俺の方に、白い棒のような脚が近づいてくる。
あぁ、どうせあの人がなんかしたんだ。
記憶の奥底で嫌悪感がいっぱいなあの微笑みが浮かび上がる。

「ど、せ...アンタがなんか。..した、んでしょ....?」

「...、」

表情なんて見えるはずもないし、俺の問いに答える声もない。
だって、顔を上げることすら渋るほど動きたくないのだから。
しかし1つだけ確実なのは、あの人は絶対に人懐っこい笑みを浮かべているということ。

人を階段から突き落としても、
包丁で刺したとしても、
例え一服盛ったとしても、
あの人に後悔や謝罪の意などない。
あるのは『自分は正しい』という、何とも自己中心的で傍迷惑な感情だけ。

「...こた、えたら?」

「...答えたら、君は俺になにか利益のあるものを与えてくれるのかい?」

本当に迷惑。
この俺は無力で選択権などないと諭すような声色も、
ゆっくりと首へかけられる指も、
全ては自分のためだけの行為。
本当に俺を巻き込まないでほしい。

あの人は俺に言った、『君が好きだ』と。
でも俺がそれに「はいそうですか」って答えると思う?
そんなわけがない。
それからだ、こんなことが始まったのは。

キモチ悪い。
吐き気がこみ上げてくる。
胃液がせり上がってくる感覚とともに口内いっぱいに広がる酸味。
思わず顔をしかめるけど別に悪くないよね?
床に触れている片方の頬から体温がなくなっていく。
とうとう手足の感覚が全て消えた。

「苦しそうだね、助けてあげようか?」

あ、そう。
ここでこの人に懇願したら俺の負け。
ついでに関係性も無理やり変えられる。
目の前の悪魔の理屈はこうだ、
『だって君は俺の手をとっただろう?』
忌々しい顔は、こんな想像にもぴったりと当てはまった。
こんな奴の力を借りるくらいなら....、そう思い力を入れたはずの手足は勿論ビクともせず、再び脱力感に襲われる。

「無駄な抵抗はよしたら?君のためにはならないだろうに、」

再び悪魔が天使の囁きを洩らす。
いい加減カチンときた俺は満を持して言った。

「はっ・・・・クソっ、たれ。」


  あぁ、さようなら。


後日談↓

「やぁ、坊や」

「・・・・こっち来ないでください、」

「別にいいじゃないか♪」

「アンタよく俺に顔見せられたっすね。自分が昨日なにしたか覚えてないんすか?」

「やだなぁ、勿論覚えてるよ!....君に一服盛ってあわよくば既成事実を手に入れようとした」

「既成事実って、俺女じゃないから意味ないし」

「君の心の中にそのときの記憶さえ残ればすむことだよ?人間は楽しかった記憶より、そういうことの方が忘れにくいらしいから★」

「あっそ....」

「ところで、君は昨日誰に助けてもらったのかな?」

「俺を探していた遠山と、付き添いとして一緒にいた財前さん」

「ふーん・・・・あの坊やと、ピアスね」

「他の人になんかしたら、一生口聞かないし、アンタがどんな手を使おうとYESって言わないから」

「それは困るなぁ・・・じゃあやめとこっと」

「それでいい」

「で、坊やはいつ俺のものになってくれるのかな?」

「少なくとも、一服盛るような人に靡く趣味俺にはないね」

「残念、」


 (ま、そのうち絶対にYESって言わせてあげるよ)

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