その他

□腕を広げて君を待つ
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※偽造ネタ有
 白澤が鬼灯至上主義



「なぁ、お前って人の子だったの?」

不意に聞かれる己の過去。
正直言って不愉快極まりないその忌々しいその記憶は消えることなく今も存在している。
しかし、当の昔に復習と言う名の私怨の混ざった拷問は済んでいるため、今更口にするのが戸惑われるわけではない。
だが言って気持ちの記憶でないのは確かだ。
それでも、いつものニヤケ顔ではなく、白澤が真剣な表情をしているため思わず応えてしまった。

「えぇそうですよ?元々私は人の子でした。まぁ、雨が降らないという理由で生贄にされたのですが....」

「...ねぇ鬼灯、」

彼は優しい手つきで私の頭を撫でる。
心地よい。
素直な感想が脳を支配するが、その表情が引っかかった。
同情ではなく自然な苦笑い。
しかしその中に、微妙な何かが隠されている。
鬼灯....これが私の今の名前。
この目の前の吉兆の神獣は知らない前の名前は、呼ばれることなど2度とないのか?
急に何とも言えない空漠に襲われた。

「?どうした、」

「いえ、別に・・・」

「・・・・・大丈夫だよ?丁」

聞き間違いかと耳を疑った。
だが、彼は確かに呼んだのだ。
かつての名を...ずっと忘れていたその名前を。

「どう、して・・・?」

「ん?別にいいじゃないか。それよりさ、お前がシケた顔なんかするなよ!不安ならいつでも呼んであげるから....」

投げかけられる言葉に何も言えなかった。
ただ彼の背に顔を隠すことだけがかろうじてできたくらいだ。
本当は望んでいたのかもしれない。
その名を、自分を必要として呼んでくるのを。
葬り去ったはずの感情が息を吹き返した。

「いいです。私はもう『鬼灯』なのですから...。でも白澤さん、ありがとうございました」

この時堕ちたのはどちらだったのか。
ただ、鬼灯が子供....それこそ人間のときから白澤が好意をよせていたのは誰も知らない話。
そして、自分のものにしようと最初からその気でいたのも。

 (あぁ、君がやっと地獄に来た)

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