怪盗話
□『4』
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Side Fuhaku
【危ない!!】
フラッと前に倒れそうになった探偵を
僕は受け止めていた。
【一君!!】
「…………かなりの高熱だ。安静にさせとかねば、命にかかわる。」
熱があったのはしってた。
だけどさっきよりもまた熱があがってる………。
「おそらく激しい運動か何かをしたからだろう。そうでなければおかしい。」
「そういやさっき、なんか金属音が響いてたなー。」
【まさか………。】
一君に探偵を預けて、監禁していたところを見る。
【やっぱり……。何かで鎖が割られてる……。】
「とにかく一旦安静させねば「待ちなさい。」…………誰だ。」
【…………天霧さん…か。】
近くの物陰から見覚えのある、
男の人が現れた。
【なにしにきたのさ。もう君たちとは関係はないよね。】
「浮薄………いや、沖田総司。あなたは彼女との約束を破る気でいるのですか?」
【なっ………。】
「………彼女には、昔の記憶がございません。」
【えっ………。】
何で?
思わず一君に預けた探偵を見る。
「あなたがあの場所を去ったあと、彼女は人身事故に遭ってしまったのです。その時に頭部を強打してしまい………。」
【じゃあ一つ聞くけどさ。何で探偵がペンダントをもってるのさ。あれは………】
「それが凪さんだからですよ。知らないと思いますが、彼女はあなたから貰ったペンダントを事故のときもずっと握っていたんです。」
【………でも、名字が違う。あの子の名字は………『神風』。神風凪。】
「記憶をなくした際、自身の名字をも忘れておられていました。今の名字は私と風間で考えたものです。」
【じゃあ、この子は本当に、あの………?】
「はい。」
天霧さんはさらりとそう言った。
それじゃあ、
君は本当にあの時の凪ちゃんなんだね。
【少し、頼んでいいかな。】
「何でしょう。」
【今日一日、凪ちゃんを預かりたいんだ。イチかバチかかけてみたい。】
「…………いいでしょう。では、彼女のキズと熱が癒えるまで。あなたに彼女の所有権を渡します。警察と風間には私がなんとかしましょう。」
【何でそこまでするのさ。】
「凪さんのあの時の笑顔を、もう一度みたいからですよ。」
【そっか。】
「よろしくたのみましたよ。沖田。」
くるりと踵をかえし、
天霧はさっき来た方へと去っていった。
「凪がか…………。」
ぼそりと一君が呟く。
「まさか海風だったとはな。
正直、俺も驚いたな。」
【そうだね………。昔は一君や近所の皆とチャンバラごっこで遊んでたな……。】
懐かしい思い出が蘇る。
木刀を持って小さな凪ちゃんが僕に向かって走ってくる。
ちょこまか動くから狙いを定めるのが難しくて、いつも苦戦してたのは僕。
絶対に君の記憶、
戻してみせるよ。
あの時のーーーー
約束を守るために。
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