読物2(ライチ)
□2/14の裏切り
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それはとある2月14日のことだった。
「どうすっかなぁ…コレ」
タミヤは悩んでいた。その足元には紙袋いっぱいのチョコレート。バレンタインデーになるとタミヤにチョコが大量に贈られる。それはもはや2月14日おなじみの光景であった。
そして、
そんな幸せすぎる状況に悩むタミヤを玉座の上からすこぶる不機嫌そうに見る男がいた。
(タミヤめ…!またあんなにいっぱいチョコを!)
ゼラはそんなことを考えていた。考えて考えて、しまいには愛とは、恋とはと言う心理学の方面にまで思考が及び、何やら難しい言葉をぶつぶつと呟きだす。
「ねぇ…ゼラ。チョコくらいボクが作ってあげるよ」
愛しの帝王の苦しむ姿に、まずジャイボが動いた。
「ゼラの偉大さを女どもは知らないから、タミヤなんかにチョコを贈るんですよ!!」
続いてニコが。
「あらぁ!女子だってゼラの美しさには気づいてるわよ!ただ、あんまりにも完璧で美しいから近づけないだけなんじゃないかしら」
最後に雷蔵が乙女的意見でフォロー。
彼ら三人が思うことはみな同じ。
"ゼラの機嫌を直さなければ"
帝王が被害妄想にとらわれたり、疑心暗鬼に陥れば間違いなく大変なことになる。
三人にはそれが十分分かっていた。
「そうだな、ふふっ…君達はさすがだよ」
あ、ゼラの機嫌が直ってきた。三人は心の中で安堵する。
よし、あともう一押しで…
バァン!!
「みんな、遅れてごめん!」
やってきたのは遅刻していたヤコブだった。
なにやら、興奮した様子で雷蔵たちのもとへ駆け寄る。
「ねぇ!聞いて聞いてっ!!」
ヤコブが話し出した。
「僕ね、今日チョコもらっちった!!」
「!!!??」
かつてない衝撃が走った。
まさか…まさかあのヤコブが…
全員が金縛りにあったかのように身動き一つ出来ないまま
約1分…
「なるほどな…」
その沈黙を破ったのはゼラであった。
するりと玉座から立ち上がり、薄い唇を開く。
「ヤコブ処刑!!!」
(…きゃは☆ヤコブ可哀相)
(あの馬鹿ったら…少しは空気読みなさいよね)