Variations―変奏曲―

□屋上にて
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―晴れた日の屋上。


本来は、一般人は立ち入り禁止だが
そもそも『人』ではない彼等に
その忠告は無意味だ。




それぞれが愛用の楽器を片手に
堂々と立っている。

その振る舞いは、
トランペットとトロンボーン
―吹奏楽の花形、そのものだった。









「何をするつもりだ?トランペット」


何処か刺々しく言ったのは
テナートロンボーン。
突然の呼び出しに、苛立っていた。



そんな彼を一歩引いて見るのは
アイーダトランペット、
ピッコロトランペット、
コルネットとバストロンボーン。

そして、彼の目の前に居るのは
呼び出した本人―トランペット。





「晴れた日ってさ、何か知らないけど
テンション上がるだろ?」


突然切り出したトランペットに
周りはポカンとしていた。





「こういう日は、
楽器吹きたくなるんだけど…
一人じゃつまんねーだろ」





そう言ってトランペットは
トロンボーンを見た。

ニッと歯を見せて笑いながら。



「つまり」と言ってトロンボーンは
トランペットに、手を伸ばす。










「お前の気紛れに巻き込んだのか!」
「Σいだだだだだだっ!?
ちょっ、こめかみ入ってる!」





そして、その頭を掴み
こめかみに拳を押し付けた。

あまりの痛みにトランペットは涙目。



しかし、いつもの事なので
周囲は蚊帳の外だった。
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