小説(長編)

□入学式早々…
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[南棟の入学式会場にて]


ざわついた棟内。
募る苛立ち。

もう少しで座席をたとうとした頃
タイミング良くアナウンスが流れた。

『只今より、第26回目
私立黒鐡学園の入学式を行います。
生徒は所定の自分の席に
着席願います。』

ここK鐡学園の入学式には、
親は参加できない。
完全に隔離された中での入学式。

僕ら入学生徒はあとから入場する。

棟内に聞いたことのある
音楽が流れはじめた。
僕と百合はS1、つまり
特別クラスの並びにいる。
ABCDその次が僕らだ。
前の生徒が続々と入場していく。


隣を見ると百合が不安げに
前を見ていた。


「恐る事はない。
糞のような所だ。それに、僕もいる。」

そういうと、百合は安心したのか
顔の表情がすこし緩んだ。

遂に前に人がいなくなり、
僕らは前進した。

眩しいほどのライト。
僕らを見た上の学年の生徒らは、
みな口々に何かを言っている。

2階を見ると、5人の生徒が
こちらを見ていた。
俗に言うS5とやらだ。

僕はそいつらにわざと
微笑みかけ、所定の席についた。

長々と続く理事長の挨拶。


いつの間にか僕は寝てしまい、
ゆさゆさと体をゆする
ものがいた。

金髪おまけに長髪ときた。
そんな見た目のちゃらんぽらんな
生徒が僕を触っていた。

ー狗飼 誠ー
そんな名前が頭をよぎった。

「ねえ君。今夜、僕の部屋にこない?」

行くはずがない。
未だに僕の肩に置かれた手を
振り払い、百合を探す。

だが、どこにも見当たらない。

「百合はどこだ」

「ん?ああ、女の子みたいなこ?
それならさっきクロトが持ち帰り♪」

その瞬間、僕は破裂した。
男の胸ぐらを掴み、睨む。

「そいつは…今どこにいる」

男はへらっとして

「そんな顔して睨んで…誘ってるの?」

気持ち悪いことを言う男だ。
奴から手を離し、踵を返して歩き出す。

そんな僕に奴はこう言った。

「S棟の506号室」

そこに百合がいるのか?
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