小説(長編)

□入学式早々…
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「泣くほど嬉しいか?」

僕ははっと目を開けた。
自分がしていた行為に悪寒がする。

勢い良く相手を押しのけると、
案外簡単に相手は退いた。


「何のつもりか知らないが、
おふざけならよせ。
もう僕に関わるな。百合にもだ。」

そういい、僕は早歩きで
静の部屋を出た。

ーS棟、707号室にてー

「…駄目、思い出したく、な、…」

僕は自室で1人啜り泣いていた。
思い出してしまった。
あの頃のことを。

傷つけられてもあいつから、
離れられなかった。


数分後、いつもの薬を飲む。
大量に、だ。
でないと理性が保てない。

その時、ソファーのうえにある
携帯電話が鳴った。

液晶画面を見ると、非通知からだった。


「…また泣いているのか」


あいつだ。
あいつの声に違いなかった。
何故、番号を知っているのか。

「番号なら誠に聞いた。
百合とやらは今日、あいつの部屋に
泊まるらしいぞ。」

なんの感情も起こらなかった。
百合には好きなことをしてほしい。
いつまでも僕が縛り付けていては、
百合のためにならないから。

静は僕の心をわかっているかのように
優しくも悪魔の声で囁いた。

『こっちにこい』
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