黒バス
□近すぎて
1ページ/2ページ
2月。まだ雪が降ったりしてて寒い。今日は寝坊して慌てて家を出たもんだから、防寒対策が全然出来なかった。
「う〜…さみぃ」
「当たり前なのだよ、そんな格好で」
防寒具無しの俺に比べて真ちゃんはコート、マフラー、手袋、カイロまで完璧な装備だった。
「俺、帰りまで生きてっかな」
「はあ…馬鹿なことを言うな」
「今ため息ついたな!マジで凍えるくらいさみぃんだっ…うわっ!?」
自業自得だけど寒すぎて逆ギレする俺の顔面に暖かくてふわっとした柔らかいものが飛んできた。
「…え、マフラー…?」
「今日くらい貸してやるのだよ。…お前を見ているこっちが寒くてたまらんからな」
「もぉー真ちゃんったらツンデレなんだからー♪」
「やはり返せ」
「うえっ!?冗談!冗談だってば真ちゃん!」
なーんてやり取りしてるうちに学校に着いた。
教室はやっぱあったかくて天国みてーだった。HRも終わって1時間目に入ろうとしていた頃、未だにマフラーをはずさない俺に真ちゃんは不思議そうに問いかけた。
「高尾、もう1時間目が始まるぞ。いい加減マフラーをはずさないのか?」
「んー?だってあったけぇし」
「教室の暖房で十分暖かいだろう」
「…まあ、そーなんだけどさ…」
「…?」
決して寒くない、いや寧ろ席は窓際の後ろだから暖房に一番近い。暑いと言ってもいいくらいだ。…いや、それは言い過ぎだが、マフラーはいらないくらいの温度だ。はずそうとしないのは…まあぶっちゃけた話、真ちゃんの匂いがするからであって…。
(めっちゃ真ちゃんの匂いする…)
マフラーを鼻くらいにまで巻いているから嗅いでいるとは分からないだろう。教師にはカゼひいてて寒いから〜といったウソをつきマフラー着用にOKが出た。
(…やべぇ。すんげー近くに真ちゃんがいるみたい…)
おかげで全く授業に集中出来なかった。
2時間目、3時間目と、いっこうにマフラーをはずさない。真ちゃんも呆れてるのかもうつっこんでこない。移動教室、朝食、体育、部活にまでマフラーをつけていき(部活中はもちろんはずしたけど)、流石に真ちゃんも…びびってたな。
「高尾!つけすぎなのだよ!見ているこっちが暑い!」
今度は暑くさせてしまったみたいだ。
「わりーわりー!…でも、真ちゃんと常に一緒にいられてるみたいで…あ!なんか変態っぽい…か…?」
顔を赤くしながら言う俺に真ちゃんはまたまた呆れた顔で言う。
「だから馬鹿なのだよ」
「なっ!?」
「そんなことをしなくても常に一緒にいるだろう」
「…!」
そうだ、そんなことしなくても、いつも一緒にいるじゃん。馬鹿だなー、俺。
「フッ…近すぎて気付かなかったか?」
真ちゃんは柔らかく微笑む。
(あー、くそ!ぜってー今顔赤ぇ!!)
――――――――――
続きにてあとがき