writing(文)
□きっとそれも一つの『愛』だから
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僕の悩みの種はきっとあの馬鹿上司なんだ。
例えば、
「早く起きて下さいよ銀さん!!もう8時ですよ!!」
「……あと24時間〜」
「それ1日じゃねぇか!!」
僕が居なけりゃ何も出来ないんじゃないかと思う程のマダオっぷりに毎日呆れてるし正直ウザイ。
でも、このマダオっぷりに安心してしまう自分が居る。
僕はこの人に必要とされているんだって思ってしまうから。
例えば、
「ただいま。」
「お帰りなさい。」
そんな当たり前な会話をしている時のあの人の少し嬉しそうな顔を見るとこっちも嬉しくなって、だけど寂しくもなる。
あの人の僕の知らない過去の傷跡がその控えめな笑みに見え隠れしてるみたいで。
例えば、
「送ってやるよ。」
「有難う御座います。」
あの人が渡してくれたヘルメットの重みが嬉しくて、切ない。
だって、あの人の優しさは僕だけに向けられるものじゃないって事を知ってるから。
例えば、
「怪我ねぇか。」
「はい、大丈夫です。」
「ん。」
そう言って僕の頭を乱暴に撫でる大きな手に絶大な信頼をしている筈なのにいつかこの手が、この人が僕らを置いて行ってしまいそうで不安になって、そして守られてばかりの自分に悲しくなる。
僕だってこの人の隣で戦いたい。この人を守りたいのに。
例えば、あの人が他の人助けた分誇らしい気持ちになるのに、どうしてか酷く泣きたくなる。
あの人は僕らのリーダーなのに。
僕らのなのに。
どうしてあの人は向こうにいっちゃうの。
ねえ、こっち向いてよ。
大丈夫だっていってよ!!
こんな矛盾だらけで醜い気持ち、僕は知らない。
なんにも知らないんだ。
こんなの寺子屋でだって、姉上にだって教えて貰った事無いんだ。
ねえ、誰か教えてよ。
この気持ちに名前はあるの?