短編集

□タイムリミットの差
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「ねぇダメなのー?」
俺には目もくれず目の前のパソコンに黙々と文字を打ち込む##NAME1##。
肩をガクガクと揺すると
「見えないじゃん!」
と抗議の声があがりパソコンの前から離れる那奈。やった〜と思ったのもつかの間、##NAME1##は観葉植物に水やりを始める。多趣味な彼女を持つと苦労するものだ。
「あたしロナルドの彼女じゃないよ?」
枯れ葉をちぎりながらさらりと一言。
「なんでー。こんなに愛し合ってるのにー。」
ぶーと口を膨らませると水やりを中断させて俺の方を向く。
「確かに、そうだよ?あたしはロナルドが好き、だよ。でも、あたしは貴方と違って人間なの。死神にとってまばたきをするのとなんらかわりのないような時で人間は死んでしまう。だから、だからこそあたしと貴方は深く関わってはいけない。もともと、関わってはいけない者同士。それは人間と悪魔の中立の立場である貴方が一番よくわかっているはず。」
最後は掻き消されるような泣き声で呟くと再び水やりを始めた。シクラメンの花が##NAME1##の涙で光りその雫は茎を伝って土に染み込む。
「自分だけ老けるのが怖い?」
ふんわりと後ろから抱きしめる。
「そんなことロナルドが気にしないのは知ってる。」

絶対に振り返ってくれない、そう思いながらも繰り返し、繰り返し口説いてきた。
やっと手に入れたたった一人のかけがえのない存在。
お前らしくないな、同僚にもセンパイにも言われた言葉。
一人に縛られること、ましてや人間に。
「なんだ知ってんじゃん。」
じゃあ何が不満?と##NAME1##の頭に顎を乗せる。
「自分でも上手く言えないけど、深く関われば関わるほど私は貴方を、ロナルドをもっと好きになっていくと思う。けど時を刻めば刻むほど気持ちとはうらはらに私の寿命は縮まっていく。きっと最期に私は誰よりも貴方を恨む。私を、人間を愛した貴方を。貴方をもっと好きになることに恐怖を抱いたことをきっと最期は恨みに変えてしまう。それが、怖い。」
腕の中で震える##NAME1##は力を入れたら壊れてしまいそうなほど脆く儚くて。
人間という貧弱な存在に想いを寄せた。
その気持ちが今、目の前にいる人間を苦しめている。
それでも…
「大丈夫。人間に干渉した時点で俺は規則破りの堕死神だから。##NAME1##が死んだ時は多分、俺も死ぬんじゃないかなぁ。だから恨む必要もないし、俺を好きになることに恐怖を覚える必要もない。俺に残された命は##NAME1##と同じ長さ。安心っしょ?」

貴方がニッコリと笑ったのが腕の中にいても伝わった。
「なんだ。信じていいの?」

この時、初めて貴方の言葉を信用することができた。
安心から涙が溢れ、貴方のジャケットを濡らす。

那奈を苦しめる位なら、永遠の命など惜しくない。限りある命を二人共に歩めればそれでいい。
きっと、そうでなければ君が死んでしまった時に俺の心が死んでしまう。
曖昧な関係にピリオドを打って
「じゃあ今日からちゃんと彼女ね?」
万事解決DIE☆
 

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