short dream
□運命はすぐそこに
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『え、やだよ』
「なんでさ」
女の子たちうるさいからというと、「いつものことでしょ」とひと蹴り。私は悟った。何を言っても無駄なのだ。
『…わかったよ』
「よし、じゃあ行こ」
手を引かれるままに体育館に向かった。
きゃー!黄瀬くぅーん!!
こっち向いてー!!
案の定だ。
きゃーきゃーと黄瀬涼太に向けて黄色い声が飛び交う。体育館内をぐるりと囲むようにギャラリーが集まっている。さっきまで隣にいた友達もいつの間にかギャラリーの中にいる。私はギャラリー達とは少し離れたところに座り見ることにした。
こんなにギャラリーがいて練習しづらくないのだろうか、そんなことをぼんやりと考えながら練習に取り組んでいるレギュラー陣を見つめている。あ、今シュートを打った。独特なフォームだな、と見ているとその人と目があった。こういう時ってどうすればいいのだろう、とりあえず笑顔だよね。そう思い少し笑うと目を逸らされてしまった。初対面で笑いかけるのはまずかったかな?まぁ、いっか。
気がつくと練習が終わってギャラリーも少なくなっていた。
「あ、起きた?それじゃあ、帰ろっか」
うんっと返事を返し歩き出す
『ごめんね、寝ちゃってた』
「いーよ!いつものことだし」
なんて会話をしながら体育館を出ようとした時、バスケットボールが足元にコロコロと転がってきた。誰かの足音が聞こえたので拾ってあげようとしゃがみボールをとった。すいませんと頭の上から聞こえたので、「大丈夫ですよ」といい立ち上がった。
「あ…」
『あ…』
目の前にいるのはまぎれもなく、先程の練習で目があったあの人だ。
『あの、えっと…』
はいっとボールを渡す。
「あ、うん」と気まずそうに受け取る彼。やっぱり、目があったからって微笑むのは変だったのかな?そんなことを思いながらも、この気まずさから逃げたかったから、「それじゃあ」と発し友達と歩き出した時、腕を掴まれた。
「あの、…ありがとう」
手の甲で口を隠して少し照れている様子の彼。そんな彼を見てると自然と口元が綻ぶ。
たまにはいいかもしれない。