その他
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ふわり。
不意に感じた気配に、視線を上げる。
「ベル、ルッス、レヴィ」
続いて降ってきたのは、聞き慣れた声。
にっ、と口角を上げる。
「……ししっ、おかえりマーモン」
「あらぁ、マモちゃんじゃない!無事だったのね〜」
いつの間に現れたのだろう。
俺たちの頭上にふよふよと浮く、小さな小さな黒い姿。
マーモンだった。
その姿を捉えると同時に気付く。
こいつ、幻覚だ。俺が一目で気付ける程度には低度な。
だからと言って弱ってる様子はないから、多分、今は俺らの前に姿を出せればそれでいいんだろう。つまりは、連絡のためにここに出てきたってこと。
「…戦いはどうなったのだ」
相変わらず空気の読めないレヴィが、いきなり核心をついた質問をする。
…まぁでも、今回ばかりは俺も気になるのがホンネ。
「うん。…話せば長くなるんだけど、そのために来たからね。全部、話すよ」
意外にも素直なその言葉に、俺はマーモンを見つめた。
それから聞いた話は、なんていうか、いろいろと驚きだった。
最初にイェーガーと対峙したメンバーは、壊滅的な痛手を負ったこと。
最終的には沢田綱吉が、イェーガーとバミューダに勝ったこと。
チェッカーフェイスは、アルコバレーノを創った張本人だったこと。
それから、マーモンの呪いが解けたこと。
石の過去やおしゃぶりと夜の炎のこれからについても、順を追って話される真実。
それは、俺には少し難しくて。
というか、正直言って、あんまり興味ない。
…それより、そんなことより、ずっとずっと気になること。
マーモンはまだ、話してない。
「それと、ユニの先祖なんだけど…」
「待てよ、マーモン」
「ム?」
「そんなんいーからさ、教えてよ」
「……」
突然口を開いた俺に、マーモンだけでなくルッスとレヴィも怪訝な顔をする。
…ほんとは、お前らだって気になってるくせに。それとも、例の箇所をさらりと流したマーモンの話術に、まんまとハマったのか。
もしそうだったなら幻滅だね、と心の中で呟いてから、マーモンを見据えて問う。
「『壊滅的な痛手』ってさ、スクとボス、どうなったワケ?」
ピシッと、空気が固まったのがわかった。
それでも構わず、続ける。
「ねえ、マーモン。教えてよ」
二人は、どうしたの?
全員、ぴくりとも動かない。
まるで、時を止めたよう。
なんとなく、察してはいた。
これは、まだしてはいけない質問なんだろうと。
でも、王子はそんなモノに縛られたりしない。そんなのはゴメンだ。
マーモンはしばらく黙っていたが、やがてゆっくりと口を開いた。
「…本当は、ちゃんと容態が確定してから言うつもりだったんだけどね。そんなに知りたいなら、隠しておく理由もないさ」
「…マモちゃ」
「聞きたい。教えろよ、マーモン」
どくん。どくん。
自分でも不思議なほどに、心臓が大きく跳ねている。
マーモンはただ、ひとつ頷いて。
小さな唇を、ゆっくり動かした。
「スクアーロは、心臓を貫かれて瀕死。ボスは、片腕を失くした」
--------その言葉は、いやに現実味がなくて、それなのにリアルだった。