その他

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「……っ」


顔をあげる。
リボーンがオレを見つめていた。


「ツナ」


もう一度、名前を呼ばれる。

ボルサリーノから覗く鋭い瞳に、意識を引き戻される。
どこまでも深く、底が見えない漆黒。そこにオレの正気があるように思えた。

暴れていた心臓が、落ち着く。
視界がクリアになっていく。

…大丈夫。



リボーンが言わんとすることはわかってる。目線だけでそう伝えて、ひとつ深呼吸した。


……今、オレがするべきことは。


力強い微笑みを作って、言う。


「隼人、クローム。…必ず、助けよう」



今、オレがするべきこと。

それは、ボスとして、揺らぐことなく凛と立つことだ。



オレが放った言葉に、隼人とクロームの目の色が、わずかに明るくなる。


「ボス…」

それでもやはり不安そうにオレを見るクロームに、優しく微笑みかける。

「大丈夫だよ、クローム。あの骸が、簡単に向こうの思うようになるわけない。きっと、無事だから」

うそだ、無事なわけない。


言葉に反してそう思う心を押し込めて、無理やり笑みを保つ。


ここで、オレが揺らいだりしたらダメだ。
弱音なんて、吐くわけにいかない。


ボスを継ぐにあたって、帝王学はリボーンから嫌というほど叩き込まれた。

ファミリーへの負担を少しでも減らすために、オレは、ボスとしてしっかりと立っていないといけない。
もしオレがこんなところで折れたら、ボンゴレ全体まで崩れかねない。それも相手の狙いのひとつなのかもしれないけれど、それならなおさら崩れるわけにはいかない。


胸が、心臓を掴まれたようにギュッと痛む。
脳裏に藍と赤がちらつく。
不安が溢れてくる。

助けなきゃ。今すぐ、骸を助けに行かなきゃ。

そう暴れる思いに、流されるまま動きたくなる。


…でも、オレが今するべきなのは、感情のまま動くことじゃない。

確実に、そしてできるだけ隠密に骸を助け出すこと。

そのために、演技でも何でも、みんなの支柱になることだ。


そういうことだろ?とリボーンを見れば、彼もニヒルな笑みを浮かべていた。

クロームと隼人を確認すると、二人とも前を向いた表情をしている。



…きっと、無事だから。

クロームに言った言葉を、反芻する。

この言葉がうわべだけのものだなんて、わかってる。
….でも、今は。

今は、前を向くほうが先だから。



「…骸を、助ける」

「「はい」」
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