その他

□4
1ページ/3ページ




急に倒れてしまったクロームをソファに横たえて、数分。

オレ達は全員無言のまま、ただじっとクロームを見つめていた。



今、クロームは骸と会えているのか。どんな会話をしているのか。
それはオレ達には知りえない。
でも、少なくとも今、何かが起きているのは確実で。
ただ、焦燥感が募っていく。

きっとそれは、隼人も同じなのだろう。ちらりと見れば、険しい表情をしている。
リボーン…は、ポーカーフェイスでわからないけど。でも、リボーンだって冷静なだけで、骸を助けたいと思っていることは変わらないはずだ。


と、不意にクロームの顔がわずかにしかめられた。
続けて、ゆっくりと彼女の瞼が持ち上がる。


声をかけようとした、そのとき。
…その瞼の隙間から、涙が零れた。


「……ぁ…、ボス…」

「…っ、クローム…! 大丈夫?」


そう聞いても、答えない。
ひどく困惑した表情で、涙をいっぱいにたたえて。苦しくて言葉も出ない、そんな様子だった。

それだけで、何か--------良くない何かがあったのだと、確信できてしまう。


…骸、お前、まさか本当に。

浮かんだ思考をはっとして追い出してから、恐る恐る問う。


「…骸は?」


それには答えず、体を起こしてうつむくクローム。

その手は、スカートの裾を強く強く握りしめて、カタカタと震えていた。
何かを堪えるようなその仕草に、ただならぬものを感じる。

なかなか口を開かない彼女に、それでもじっと待っていれば、やがてゆっくりと言葉が吐き出された。


「……骸様から、みんなに…伝言があるの」

「伝言…」


ということは、少なくとも骸と会えたということなのか。
わずかな安堵が広がる。

でもそれより気になるのは、その内容。


「…なんて?」


「…今回のことは、自分の不手際だから…、ボンゴレは、手を出すな、って」



……え?


頭が、真っ白になった。



『今回のことは、自分の不手際だから』

プライドの高いあいつらしい。

『ボンゴレは手を出すな』

その台詞を言った骸が、皮肉にもありありと浮かぶ。



……でも。

でも、そんなの、ずるい。



オレだって、オレ達だって、骸を助けたいのに。

一方的に伝言なんて押し付けて、「手を出すな」なんて。そんなの、おかしいじゃん。ずるいよ。



溢れてくるのは、子供じみた感情。
純粋に骸が大切だからこその、会えない骸に対する文句だった。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ