その他
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急に倒れてしまったクロームをソファに横たえて、数分。
オレ達は全員無言のまま、ただじっとクロームを見つめていた。
今、クロームは骸と会えているのか。どんな会話をしているのか。
それはオレ達には知りえない。
でも、少なくとも今、何かが起きているのは確実で。
ただ、焦燥感が募っていく。
きっとそれは、隼人も同じなのだろう。ちらりと見れば、険しい表情をしている。
リボーン…は、ポーカーフェイスでわからないけど。でも、リボーンだって冷静なだけで、骸を助けたいと思っていることは変わらないはずだ。
と、不意にクロームの顔がわずかにしかめられた。
続けて、ゆっくりと彼女の瞼が持ち上がる。
声をかけようとした、そのとき。
…その瞼の隙間から、涙が零れた。
「……ぁ…、ボス…」
「…っ、クローム…! 大丈夫?」
そう聞いても、答えない。
ひどく困惑した表情で、涙をいっぱいにたたえて。苦しくて言葉も出ない、そんな様子だった。
それだけで、何か--------良くない何かがあったのだと、確信できてしまう。
…骸、お前、まさか本当に。
浮かんだ思考をはっとして追い出してから、恐る恐る問う。
「…骸は?」
それには答えず、体を起こしてうつむくクローム。
その手は、スカートの裾を強く強く握りしめて、カタカタと震えていた。
何かを堪えるようなその仕草に、ただならぬものを感じる。
なかなか口を開かない彼女に、それでもじっと待っていれば、やがてゆっくりと言葉が吐き出された。
「……骸様から、みんなに…伝言があるの」
「伝言…」
ということは、少なくとも骸と会えたということなのか。
わずかな安堵が広がる。
でもそれより気になるのは、その内容。
「…なんて?」
「…今回のことは、自分の不手際だから…、ボンゴレは、手を出すな、って」
……え?
頭が、真っ白になった。
『今回のことは、自分の不手際だから』
プライドの高いあいつらしい。
『ボンゴレは手を出すな』
その台詞を言った骸が、皮肉にもありありと浮かぶ。
……でも。
でも、そんなの、ずるい。
オレだって、オレ達だって、骸を助けたいのに。
一方的に伝言なんて押し付けて、「手を出すな」なんて。そんなの、おかしいじゃん。ずるいよ。
溢れてくるのは、子供じみた感情。
純粋に骸が大切だからこその、会えない骸に対する文句だった。