その他
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ロッソファミリー本邸--------
ボンゴレには及ばないながらも、かなり大きな建物。
それを、林の陰から窺った。
骸は、ボンゴレの守護者だ。
その事実だけで、骸がロッソ本邸にいるだろうという予測はついた。
下手な建物に監禁しては、こちらは感知しづらいが本人が逃げ出すリスクが高くなる。ボンゴレ守護者ほどの人物を捕らえておくには、ロッソの持つ本邸以外の建物では不十分だった。
ハイパー化して鋭くなった思考と超直感。
疑う理由も、疑っている時間もなかった。
ボンゴレリングと、霧系のステルス用の匣をいくつか。それだけ持ってボンゴレを飛び出してきた。
目的はただひとつ。
骸を、助け出すことだ。
見えるのは、ロッソ邸の正門。
公開されている限り、出入り口はここだけだ。
ばれないように気配を殺しながら、見張りを確認する。
……二人。
何とかなりそうだ。
簡単に段取りを立てて、そっと額に炎を灯す。特殊弾や死ぬ気丸なしでの死ぬ気のコントロールは、数年前に会得していた。
グローブにも炎を灯して、踏み出そうと力を入れる。
しかしそのとき、小さな罪悪感が胸を掠めた。
思わず、踏みとどまる。
…わかってる。
今からオレがやろうとしているのは、奇襲だ。
オレが骸のもとに辿り着くまでに、目の前の見張りを筆頭に、この件にはほぼ関わっていない者も多く傷つけるだろう。場合によっては、命を奪うこともある…かもしれない。
それが、本当は嫌だった。たまらなく嫌だった。
…でも。違う。
小さく頭を振って、迷いを追い出す。
覚悟は、とっくに決めたんだ。
今さら揺らいだりはしない。
それに、考えたくはないが、ボンゴレを敵視した時点でほとんどの者は遅かれ早かれ殺される。
もちろんできる限りの対応はするが……ここは、そういう世界だ。
それは、ここ数年で嫌というほど学んだ。
息を吸って吐いて、もう一度確認する。
今からオレは、ドン・ボンゴレとして、骸を救出する。
それは、理にかなっていることだ。
…いや、そんなの、理屈でしかない。
今オレがここにいるのはただ、また骸と何でもない日常を過ごしたい、笑い合いたい、そのためだ。
そのための戦い。
それならオレは、躊躇しない。
炎の純度が上がったのがわかる。
ゆっくりとその炎を感じてから、地を蹴った。
炎の推進力を生かして、高速で一人の背後に回る。
「な……っ!」
驚きで上げられた声は気にせず、そのまま、首に手刀を落とした。
「だ、誰だ貴様!」
慌てたもう一人が、拳銃を取り出す。体を回転させてその照準から逃れて、銃身を炎を灯した手で握り潰した。
「な…」
「…悪いが、通してくれ」
「ぐッ」
みぞおちに、拳を叩き込む。
倒れ込んだ体を受け止めて、こちらも首筋に手刀を一発。
少し強めに落としたから、これで二人ともしばらくは起きないだろう。
ぐったりと力の抜けた体を横たえて、無防備になった入口を見る。
……この向こう。
この向こうに、骸はいる。
中の気配を確認してからゆっくりと扉に手をかけた、そのときだった。
ぱちん、ぱちん。
ゆっくり、わざとらしく鳴らされたそれは、たった一人からの拍手。
「素晴らしい。実に、素晴らしい手際だったよ」
--------そんな言葉と共に現れたのは、白衣を纏った一人の男だった。