その他
□colors
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《プロローグ》
それは、一瞬だった。
流れるような銀に散る、真紅。
その胸を貫いた鎖は、鈍く輝いていて。
ひゅっと、息を吸った音がした。
とっくに麻痺したはずの嗅覚が捉えるのは、むせかえるような濃厚な血の香り。
それは、あまりにリアルで。
それなのに、美しかった。
驚くほどに、視線が奪われる。
スローモーションで倒れていく紅い体を前にして、なぜか自分の身体は言うことを聞かなくて。
不意に、右腕に、熱い痛みが走った。
そして、違和感。
しかし、その感覚すらも銀と紅に掻き消される。
ゆっくりゆっくり沈んだ先で、ドサリと音を立てて地面に触れたその体。
凝視するが、ぴくりとも動かない。
………これは、現実なのか?
そんな考えが頭をよぎって、気付けば口を開いていた。
「………−−−−、−−−−」
自分の声すらも、もはや聞こえなかった。
そして--------
この言葉が大きな意味を持つことに、まだ気付かなかった。