その他
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無残に壊れた鍵を残して、扉がゆっくりと開く。
そこにいたのは、やはり--------
「…やっと見つけたよ」
ニタリと笑う、あの男だった。
隣の骸を見やれば、ただまっすぐに冷たい目を向けている。
アランのバックには、ずらりとロッソの構成員が構えていた。
ざっと、二十人といったところか。
彼らは皆、一様にオレに殺気を向けている。
それは純粋に、敬愛する人を殺されたことへの怒り。
パニックの末に、信じ込んでいるのだ。
彼らのボスの仇が、オレであると。
唇を噛む。
人間、怒りを抱えると強い。それは、マフィアになってから何度も目の当たりにしてきたことだった。
オレを見た途端に表情を固め、今にも攻撃をしかけて来そうな彼らを、スッと手を出してアランが制止する。
「待て。まだ、もう少しだけ我慢しろ。…相手は、ドン・ボンゴレだ。怒りはわかるが、無闇に戦うべきではない」
その言葉に、オレはくっと眉を寄せた。
……あくまでも、ドン・ロッソを殺したのはオレだとするつもりなのか。
その流れのまま、オレ達を捕らえ、そして研究しようと。
完全な濡れ衣。
しかし、ボンゴレとロッソが敵対した今となっては、そんなことはもはや些細な問題であることもまた事実だった。強く、唇を結ぶ。
そのとき、不意に、アランの後ろから怒号が飛んできた。
「ドン・ボンゴレ……!!
貴様っ、よくも…よくもボスを!!!」
「許さないぞ…地位なんて関係ない、俺は絶対に、お前を許さない!!」
ずしりと、その言葉は胸にのしかかった。
心臓を掴まれたような感覚が走る。
そして同時に、震えるほどの怒り。
ああ…。
彼らはこんなにもボスを心から慕い、敬っていたのだ。
信頼を寄せていたのだ。
かけがえのない、大切な存在だったのだ。
それなのに。
『邪魔だったからだよ』
なぜ。
なぜ、なぜ……--------
「--------なぜ、殺した!!」
なぜ、そんなことができた。
ボウッと、額に炎が灯った。
突然オレがアランを見据えて放った言葉に、構えていた面々が一瞬動揺する。
しかし、それを押さえつけるように、アランの冷たい声が響いた。
「騙されるな。この男は、紛れもないボスの仇だ」
隣で静かに、骸が三叉槍を作り出す。
オレも、グローブを握り締めた。
……戦わなければ、いけないのか。
誰もが臨戦体制に入るなか、アランの声が響いた。
「ボスの命を奪ったのは、この男で間違いない!
今ここで、仇を取る!」
怒り、悲しみ、たくさんの感情が入り混じった叫びと共に、戦いが始まった。