その他
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そして、それから。
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「骸!」
ボンゴレ本部内にある、医療棟。
その中にある扉の一つを、勢いよく開けた。
あの事件から丸三日。
骸は、全てが終わった直後に糸が切れたように倒れてしまい、それから懇々と眠り続けていた。
それが今さっき目覚めたと知らせが入って、こうして慌てて駆け付けたのだ。
一刻も早く骸の姿を確認したくて、開けた扉の向こうを見る。
「……ノックぐらいして欲しいですね」
そこにいたのは、ベッドの上で上半身を起こした状態で呆れ顔をする骸だった。
「……骸…、良かった」
思った以上に元気そうなその姿に、ほっと胸を撫で下ろす。
いつも後ろで束ねている髪は、今はそのまま背中へと流れていた。
腕から伸びる点滴や病院服から覗く包帯とガーゼは痛々しいが、無理をしているようには見えない。
一方の骸は、そんなオレの様子に怪訝そうに顔を歪めた。
「…なんですか、僕がこのまま死ぬとでも?」
「いや、そんなことないって思ってたけど、けどさ……」
正直危なかったんだぞ、という言葉をぐっと飲み込んだ。
ベッドのそばに椅子を引っ張ってきて腰掛けながら、考える。
毒物について強いはずのシャマルが「初めて見るタイプだな…どうなるかわかんねぇ」なんて考え込んだりするから。
この三日間、何もできないまま、不安だけが溜まっていたのだ。
帰ってきてから調べたところ、やはりロッソは裏で薬物や兵器の開発に力を注いでいたらしい。
ついでに、あの会合のあったレストランのシェフは、ロッソの実験台にされていたということだった。
と、しばらく黙っていた骸が、目線を逸らして口を開いた。
「…まぁ、向こうも『新開発』と豪語していましたからね。その点は、さっきドクターシャマルと話しましたよ。とりあえずは問題ないそうです」
「…え、何でわかって」
「今の君が考えていることもわからないなら、術士の素質は皆無ですよ」
全部顔に出てるんです、と呆れたような笑みと共に言う骸に、唸る。
…オレって、そんなにわかりやすいだろうか。
でもまぁ、何はともあれお互いの無事を確認できたところで、ひとつ姿勢を正す。
それから、骸が目覚めたら聞こうと思っていた疑問を口にした。
「なぁ、骸。聞いていい?」
「はい?」
「みんなが来てくれたとき、なんでクロームにお礼したんだ?」
『感謝しますよ、クローム』
あのとき骸は、確かにそう言った。
ずっと気になっていたけれど、クロームは「骸様に言ってもいいのか確認しなきゃ、私の口からは言えない」と教えてくれないし、こうして骸を待つ他無かったのだ。
そう説明すれば、骸はふっと笑う。
「あぁ…別に、言っても構わなかったんですが。相変わらず律儀な娘だ」
「で? 何だったんだ、あれ」
「君がアランを問い詰めている間に、クロームに僕の居場所を伝えたんですよ。正確には、クローム達が到着する頃に僕らがいるであろう場所、ですかね」
「え、……ちょっと待って。みんなが来てたこと、知ってたの?」
ここにきて初めて入った情報に、思わず聞き返した。