桜雨
□夢の果て
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静寂に包まれた、イタリア郊外の路地。
星が見えないその夜、そこに、パシャリと水のはねる音が響く。
雨が降り注ぐ中を、黒い傘をさしたひとつの人影が歩いていた。
血と硝煙の香りに抱かれているその青年は、まだ十歳かそこらに見える。しかし、醸す雰囲気は明らかにカタギではない大人のものだった。
不意に、定速で響いていた足音がピタリと止む。
視線は動かさないまま、意識だけを研ぎ澄ませるその男。
鋭い嗅覚が捉えた遠い、しかし濃厚なそれ。
どうしようかと逡巡する。
しかしやがて、路地裏へと繋がる抜け道へと歩み出した。
その先にあるものに彼が困惑の溜め息を漏らすまで、あと八分。
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