IS夢小説
□第7章 臨海学校
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「ゴメンね、手伝って貰っちゃって」
『気にすんな♪』
放課後の廊下、赤い夕日が差し込む中を海人とシャルロットが並んであるいていた。
ふたりとも、その手には今月の学校行事、臨海学校について書かれたプリントを持っている。
「でも、よかったの?今日はセシリアたちと町に行く予定だったんでしょ?」
『いいんだよ。大体、シャルロットがいないんなら行ってもしょうがないしな』
「えっ?」
『まあ、なんだ。プリントの手伝だいでも、好きな相手と一緒の方がいいってことだよ』
そう言った海人の頬はわずかに赤く染まっている。
それは夕日の色だけではないように見えた。
「海人……」
『シャルロット……』
ふたりしかいない廊下でお互いに相手を映した瞳。
そこに言葉はいらなかった。
オレンジ色の光景の中、ふたりの影が徐々に重なって―――
「―――あ、れ?」
ぼーっとした頭で状況を確認する。
場所はIS学園1年生寮の自室。時刻は早朝5時30分。
「…………」
シャルロットはまだはっきりとしない意識のままだったが、二回まばたきをしたところでやっと現状を把握した。
「夢……」
はぁぁぁぁ……っと深く深く深海二万マイルほどのため息が漏れる。
(ああ、せめてもう十秒くらい見ていれば……)
夢の残骸に想いを馳せ、その名残を惜しむ。
先月の学年別トーナメント以降、本来の性別に戻ったシャルル・デュノアことシャルロット・デュノアは、今はもう海人とは別の部屋になっている。
けれど、1週間に二回くらいは今のような夢を見て、違うとわかっているのに隣のベッドに海人の姿を求めて視線をやるのだった。
「あれ?」
隣のベッドにルームメイトの姿がない。
それも、起きてどこかに行ったというのではなく、最初からそのベッドは使った形跡がない。
「……まぁ、いいや」
それよりも夢の続きである。
今すぐ眠りにつけば、もしかしたら続きを見れるかもしれない。
そんな淡い期待を抱いて、シャルロットはまた眠りにつこうとまぶたを閉じた。
(でもせっかく夢なら、もうちょっとエッチな内容でも僕は全然構わな―――)
…………。
「な、何を言ってるんだろうね、僕はっ」
カーッと赤くなった顔を隠すように頭のてっぺんまで布団を被ると、ドキドキと高鳴る心臓をなだめるのに苦心するシャルロットだった。