フェアリーテイル夢小説

□第13章
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楽園の塔、最上階。

そこはとても広い空間だった。

その中で玉座のようなイスに座り、用意したチェス板を眺めている人物が一人。

その人物の名は“ジェラール”と言った。

深く被ったフードからは鼻から上の表情が見えない。
だが、口元は楽しそうに笑っていた。

「そろそろ出てきたらどうだ?」

ジェラールがそう言うと、天井から一部の影が盛り上がり、ドロリと落ちた。

落ちた影は徐々に形を作っていく。
そして、それが収まり、出てきたのはカイトだ。

『チッ……バレていやがったか』

「当たり前だ。あれほど敵意をむき出しにしていたら、イヤにでも気づく」

ジェラールはスッと立ち上がり、カイトを見つめる。

「まさか、エルザより先に道化が来るとはな」

『まーな……それより、てめえは余裕そうだな、ジェラール……いや、ジークレインと呼んだほうがいいのか?』

ジェラールはニヤリと笑うと、階段から飛び降り、カイトと向き合う。

「いつから気づいてた」

『さっき、親切な奴に教わったんだよ。
評議院の一人であり、聖十の称号を持つジークレインとジェラールは同一人物であるってな』

「そうか……まぁ、ジェラールが本当の名なんだ。そう呼んでくれ」

『ああ、そうかい。ジェラール』

そう答えるカイトの顔はいつになく真剣だ。

「ん?どうした。道化らしからぬ受け答えだな。
いつもみたいに、バカ笑いでも浮かべたらどうだ」

『ギルドの家族が苦しんでんだ。そんなときに笑っていられるかよ』

「殺り合うのか?」

『それがあいつのためならな』

二人の間には不穏な空気が漂う。

まさに、一触即発と言った感じだ。

『……プッ』

そんな沈黙を撃ち破ったのはカイトの方だった。

真剣だった顔はいつの間にか笑っている。

『カカカ、止めだ止めだ。魔力が全開じゃない奴を倒しても意味がねえ』

「オレを倒せば、エルザを救えるんじゃないか」

『カカカ……自惚れんなよ、てめえ』

先程までの笑い顔はどこへ行ったやら、再び真剣な顔つきになった。

『今のてめえごときなら、エルザが来る前に殺せる。
だが、それじゃ意味がねえ。
これはエルザの闘いだ。俺が割り込む余地はねえんだよ』

ピシッ

カイトの殺気に宛てられ、ジェラールの後方にある玉座にヒビが入った。

『それに……そっちのほうがおもしろいだろ♪』

そう続けると、周りの空気が緩んだ。

「つまり、オレとは闘えないということか」

『そーゆーこと♪じゃあ、俺はエルザたちの援護に回るからな♪』

それだけ言い残すと、カイトは再び影の中に潜り込み消えていった。

「……危なかったな」

残されたジェラールは人知れずに、そう呟くのだった。
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