□君の声
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あなたと出会った年の冬。
あなたに想いを告げて、あなたもそうだと笑ってくれた冬。
こんな事がありました。
あなたは覚えてますか?



「オレ寒いのって嫌いなんだよね。」
学校の帰り道で10代目がそう呟いた。
10代目の吐く息は白く手袋をした両手で寒そうに腕を摩っていた。
「すみません10代目‼気が付かなくて‼」
俺は10代目にそんな思いをさせたくない一心で自分のマフラーを10代目に差し出した。
いきなり立ち止まった俺に10代目は困った顔でマフラーを受け取る。
こんな顔させたいわけじゃないのに俺はまたこの人を困らせたんだろうか。
尊敬する、いや誰よりも愛しているあなたのただお役に立ちたい一心で…
「ありがとう。でも獄寺君が寒いんじゃない?」
お優しい10代目はまだ困った顔で見上げてくる。
申し訳ないがとても可愛らしいと思ってしまう。
「いえ俺は大丈夫です‼10代目といるだけであったかいですから。」
思わず笑顔でそう言ってしまった俺に10代目は顔を赤くして少し怒った顔をした。
ヤバイ…こんなにどんな表情も可愛らしいなんて。
多分世界で10代目だけです。
「そうなんだ…///」
「はい。そうなんです。」
俺が渡したマフラーをグルグルと首に巻き付け先に歩いて行ってしまう。
そんな10代目の隣りに並ぼうかどうしようか俺は悩んだ。
もしかしたら怒らせてしまったんだろうか?
10代目に嫌われたら俺は…
「どうしたの⁈獄寺君、どこか痛い?」
多分すごく情けない顔してたんだろう。
10代目が心配して立ち止まってくれた。
「すみません10代目…怒らせてしまって。」
地面に頭をつける勢いで謝る俺。
10代目に嫌われたら俺生きていけないです。
「へ?オレ全然怒ってないんだけど…」
「本当ですか?」
びっくりした表情で10代目が言う。
その一言でこんなにホッとする俺。
「起こるわけないじゃないか。マフラー嬉しいし…その…恥ずかしかっただけだから///」
俯いてしまった10代目の耳が赤くて細い肩は心なしか震えている気がした。
本当にあなたはどこまでも可愛らしい。
俺期待しますよ?
「10代目…本当に好きです。あなたみたいに可愛らしい人見た事ありません。」
心からそう思って口にした言葉。
10代目はますます赤くなって俯いてしまった。
その震える肩に触れたい…
触れてもいいですか?
「10代目…寒いの嫌いなんですよね?あったかくなると思うんで…抱き締めてもいいですか?」
「なっ…///いいけど…一つお願いがあるんだけど。」
まさかいいと言ってもらえるなんて。
今の俺は10代目と同じくらい赤い自信があります。
お願い?もちろんなんだって聞きますよ。
10代目の頼みならなんだって。
「10代目は嫌だ。」
「はい?」
意味がわからなかった俺はすぐに聞き返す。
10代目は可愛らしいお顔で俺を見上げてくる。
寒いせいか少し鼻が赤くなっていた。
「10代目はオレじゃないもん。オレは沢田綱吉だもん。ちゃんと名前で呼んでくれたら抱き締めてもいい。」
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