□迷いなく
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「ありがとうございます草壁さん。」
ちょっとホッとした笑顔で言う沢田を見て草壁は部屋を出て行った。
「あれ?オレなんで…」
今、雲雀がいなかった事にホッとした自分がいた。
沢田は戸惑いながらもわかってきた。
雲雀を見ると、雲雀と話すと胸がもっと痛む事が。
ソファに座って考えているとふとソファから雲雀の香りがした。
「痛い…」
ズキンと胸が痛む。
「雲雀さん…」
「沢田?」
胸を押さえていた沢田は驚いて声のした方を振り返った。
「早かったね沢田。」
無表情で沢田を見る雲雀。
そのまま自分のソファに腰を下ろした。
表情はずっと変わらない。
「はい。すみません勝手に入っちゃって…」
痛い痛い…沢田は胸の中で呟いた。
「べつに。」
背もたれに頭を預け目を閉じる雲雀。
そんな雲雀を見つめる沢田。
いつもこのままだとなんの会話もなく時間が過ぎるので沢田は一生懸命雲雀に話し掛けた。
「今日も取り締まりだったんですか?」
「パトロール。」
「そうですか…お疲れ様です‼」
何を話しても雲雀の返事は一言。
それでも大好きな雲雀に何度も何度も話し掛けた。
「今日は獄寺君イタリアにいっちゃったんです。」
「そう。僕には関係ないけどね。」
「そういえば山本が…」
「それも僕には関係ない。」
「…」
「…」
雲雀はずっと目を閉じたまま。
沢田はずっと俯いて制服を握りしめたまま。
「雲雀さん…」
「何?」
雲雀が目を開いて俯く沢田を見る。
沢田が一瞬顔を上げると雲雀と目が合った。
「好きです…」
ズキズキズキ
痛い痛い痛い…
好きです愛してる大好き
沢田の頭の中でいろんな言葉がぐるぐる回る。
「知ってるよ。」
その雲雀の声があまりにもいつも通りで涙が出そうになってまた俯く。
今までは我慢が出来たのに。
沢田は大好きな雲雀と同じ部屋で同じ時間を過ごせるようになっただけで嬉しくて幸せだった。
どんどんわがままになる自分が嫌だった。
「雲雀さん…」
名前を呼んで話しを聞いて…
どんどん胸は苦しくなって今では痛いほどだ。
「雲雀さんは…」
一度も好きと言われていないから?
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