ALO:SUGUHA-一途な想いをあなたに

□贖罪
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1
ランチタイムになり明日奈は和人を探してるようで篠崎のクラスに入って来た。
「里香ちゃん 和人君来た?」
「来てないわよ、どうしの?、」
「一緒に食べようとしたら、教科書が机の上に置かれたままだったから」
「おかしいわね…電話した?」
「したのよ…何度かけてもでないから」
「それより一緒にランチしよう!」
「うん…そうね、食べ終わったらもう一度電話してみる」

救急車で運ばれた直葉はすぐさまICUに入った、和人も不安そうな顔で扉の前で暫く立っていた。

待合室で和人は母親に何回も電話をかけてみたが出てくれず留守電に残しておいた。
「参ったな…どうしてスグが自殺なんて」
「桐ヶ谷さんの身内の方ですか?」
「はい そうですが」
「Dr.がお呼びなので診察室に来てください」
看護師に言われ付いて行く和人は診察室に入って行く。

Dr.が和人の方に向いて開口一番告げた。
「直葉さんは特定記憶喪失になっています、何か心当たりはありますか?」
「心当たりは…ないですね…」
「そうですか、参りましたな…」
「どうしたのですか?」
「普通の記憶喪失は脳の海馬にトラブルが発生するんですが、直葉さんの場合は皆目見当がつきませんから判断が難しいんですよ」
「妹は治るんですか?」
「もう少し調べないとなんとも言えませんが、特定記憶喪失ですと部分的に抜けてある症状なので時期がくれば治るかと…」
「でもそれは、完全に治るかは…」
「半分半分ですかね…」
「そうですか…」

診察室から出て廊下を歩きながら携帯を見ると明日奈の着信履歴が並んでいた、電話かけるため一旦外へ出る事にする。

「もしもし明日奈…」
「何処にいるの?学校にもいないし」
「実は…」
明日奈に今迄の事を告げる。
「それで直葉ちゃんは?」
「まだ意識が戻らないけど、一命はとりとめたから」
「私もそこにすぐに行くから待っててね」
「うん、分かった」
1人で居るよりは安心すると思い待つ事にした。

和人が外で待っていると自転車に乗った明日奈が病院に来た。
「和人君!直葉ちゃんは?」
「今はまだICUに入ったままで…」

出張先の翠は電車の乗り換えのためホームで一息ついていた、直葉は大丈夫かと携帯を取り出し液晶画面を見ると和人からの留守電が入っていた。
「どうしたのかしら…」
翠が留守電を聴くと顔が青ざめた。
すぐさま和人の携帯に電話してみると半分泣きそうな声をしていた。
「ごめんなさい…母さん、ごめん」
「今は謝らないで!それより生きているのね?」
「うん…」
「私は今回の得意先はキャンセルするわけにいかないから、もしもの事があったらすぐ電話してね」
「分かった」
今すぐにでも行って確かめたいが会社の事情があるため自己判断が出来ない、そのため和人に直葉を任せて得意先に行くしかなかった。

ICUから直葉が出てきたので椅子に座っていた和人と明日奈は病室について行く。

Dr.と看護師に和人と明日奈が同席した。
その時長田が病室に入って来た。
「和人さん…直葉ちゃんは?」
「長田…今は大丈夫だ」
「直葉ちゃんが目を覚ましたわ」
うっすらと目を開け始めた直葉は天井を見ているが、どことなく視線が定まらない。
「スグ…分かるか?お兄ちゃんだよ」
ゆっくりと和人を見るが判断が難しいようで首を傾げている。
「お兄ちゃん?…私の家族にお兄ちゃんはいましたか?」
「じょ…冗談言わないでくれよ」
「直葉ちゃん私明日奈よ!分かる?」
「あ…明日奈…」
急に直葉の目つきが変わり明日奈の襟首を掴んだ。
「明日奈ー!あんたのせいであたしは!」
「おい!よせ!スグ…」
和人を制止する明日奈。
「あんたのせいであたしは2年間寂しい想いをしたんだ、全部あんたのせいだ!あんたがいたからあたしは身を引くしかなかった!」
直葉の目から涙が溢れ出しいきなり意識が遠退いた。
身体が崩れるのを和人が受け止め直葉を寝かせる、周りにいたDr.と看護師は驚いた顔をしていた。

「和人さん…ちょっと」
長田に呼ばれ2人とも廊下に出ると長田の持っていた携帯を見せる。
「和人さんこれを見てください」
「これってスグの携帯!」
「ファイルを開いてください、2人の事が出ています」
和人と明日奈が液晶画面を覗き込むと2人のキスしている画像がアップされた。
「これって何なの?」
「長田!どこから流出したんだ!」
「SAOとALOのセーブデータが意図的に誰かがやったみたいで」
「どこの奴だ!長田!」
「和人君…」
「悪い、長田は関係なかったな」
「ただ分かるのは直葉ちゃんが誰かからか渡されたということに」
「晶か?」
「多分…それと僕も悪い事をしたのかも」
「何が?」
「バレン洞窟に2人がクエストしてると直葉ちゃんに言ったから」
「長田!なんで余計な事を!」
「ごめんなさい…」
「和人君…あなたも悪いのよ、直葉ちゃんに正直に言ってなかったから」
「…そうだったな…」
「とにかく晶君と直葉ちゃんを助けないと!」
「それじゃ晶さんと直葉ちゃんにアミュスフィアを着用してもらわないと」
「どういうことだ?」
「晶さんと直葉ちゃんは同じバレン洞窟にリンクされてます、晶さんは剣のリセット直葉ちゃんには記憶の解放をしなければなりません」
「具体的にはどうすればいい?」
「晶さんは90層のラスボスまで行ってリセットすればいいけど…直葉ちゃんは」
「スグは?」
「PCサイトのブラウザでバレン洞窟にリンクさせて、記憶を抜き出されたからどうするか」
「和人君…両方一緒じゃ無理だから、まず直葉ちゃんを助けないとね」
「そうだな」
「和人さんとりあえず直葉ちゃんのパスワードを解読しなければならないので」
「今すぐは無理だから、スグを休ませてだな」
「そうね、私は晶君を説得してみるね」
「じゃ、僕は家に帰って早速バレン洞窟関連の詳細を調べます…パスワードのヒントでも見つけられれば」
「すまないな…2人とも迷惑かけて」
「いいのよ、私は帰るからまたね!」
「じゃ…また」
「……」

「桐ヶ谷さん…桐ヶ谷さん」
和人に声をかける看護師。
「何でしょう」
「妹さんが貴方を呼んでますよ」
「俺を?」
廊下の端にいた和人は直葉のいる病室に入る。

ベッドに横たわる直葉は和人が近付いたのか目線を和人に送る。
「貴方の名前は桐ヶ谷和人さんでしたね?」
「そうだよ、君の名前は分かる?」
「直葉…桐ヶ谷直葉です」
「直葉…ごめん…何で分からなかったのかな…」
「どうしたんですか?」
まるで他人と会話しているような空気に包まれているようで、和人は次第に自分が崩れ落ちていく感覚が和人にはあった。
「スグ…自宅に戻って必要なものを持ってくるから…待っててな…」
「ハイ…分かりました」
急いで自宅へと向かう和人だった。

2
自宅に戻って直葉の支度を整えている和人はふと直葉の部屋に行こうと2階へ上がる、記憶が戻るヒントを見つける為に手掛かりがあるかと直葉の部屋のドアを開けると言葉を失った。

直葉の部屋は辺り一面雑誌の破れた物やら壁に凹みがあったり、ベッドのシーツがあらぬ方向にあったり直葉の大切にしていた縫いぐるみが破けて綿が外にはみ出ていた。
「スグ…」
ふとゴミ箱に目をやると和人とプレイする筈だったDBOが捨ててあった、拾い上げて蓋を開けてみるとカートリッジが割れていた。
机に向かって歩きだしPCの電源を入れたがパスワードを入力しないと開かない状態になっていた。

「スグ…何が言いたかったんだ」
和人の携帯が鳴ったので見ると母親だった。
「和人…今何処なの?」
「自宅でスグの支度を整えて病院に戻ろうと」
「そう、私は夜遅く病院に着くようにするからまたね」
「うん…」

再び机を見るとタブレット端末が光っていたのでタップすると開いたので読むと次の文字が書かれてあった。

”何故あたしは明日奈さんに譲ったんだろう…”

「スグ…」
和人の心は今にも壊れそうな所に追い込まれた。

携帯電話が鳴ったので出てみると長田だった。
(もしもし和人さん、パスワードは見つかりましたか?)
「いや…ロックがかかっていてそれを外さないと」
(そうですか…これはヒントになるか分かりませんが、直葉ちゃんはこの間までイジメにあっていたんです)
「イジメ?どういうことだ?」
(同じ剣道部の後輩に嫌がらせされていたようで)
「…何故直葉は俺に言わなかったんだ」
(きっと、自分で解決しようとしたんだと思います)
「あの時に気付いていれば…」
(とにかく僕は調べて和人さんに伝えるので、宜しくお願いします)
「分かった…じゃ」

再びPCに向かい直葉が思っているだろうパスワードを入力してみる。
SUGUHA
エラー
「名前は当たり前だな」
ASUNA
エラー
「これは無いか…」
AKIRA
エラー
「まさかな…」
KAZUTO
1部がエラーしてます
「と、なると」
KAZUTO LOVE
クリアしてホーム画面になった。
「恥ずかしいなこれは、スグがここにいたら殴られたかもしれないな」
PCのWEB検索は履歴が残るのでおおよそのサイトは分かるから上部から探して行く事になる。

探し始めて十数分それらしきもののウェブサイトが見つかった、直葉が行ったとされる記憶管理システムサイトが間違いなければいいのだが。
サイトを閲覧するとバレン洞窟とリンクする項目の注意書きに次の文字が書かれていた。
*パスワードを入力すると記憶が戻りますなのでメモを控えておいてください*
「何だよこのいい加減なサイトは!」
無理もない普通に記憶管理をするのもパスワードを入力しますでは、記憶を抜き取られた者は既にパスワードも忘れる訳だからだ。
「どこにあるんだ…どこに」
パスワード欄に入力しようとするがアミュスフィアを使用して入力してくださいと出てくる。
「クソ!何だよ…記憶なくしてパスワード入れろって、アミュスフィアを被っても何の意味もないじゃないか」
和人は机の所で項垂れてしまった。
気付けば時計の針は午後4時を過ぎておりPCの電源を切り直葉の部屋を出て行く、リビングに置いてあった服などを持ち再度病院へ向かう。

明日奈は郷田の自宅に電話をしてみたが何回かけても出ないようで、郷田の自宅に電話しながら向かう事にした。

郷田の自宅に着いた明日奈は門の前でインターホーンを鳴らしたが出てくる気配がない、門戸が開くので玄関まで歩く。

1戸建て住宅の広い敷地に郷田は親からの貰い物のこの家に1人で住んでいる。

玄関からすぐに2階へ上がり郷田の部屋へと急ぐ、部屋の前でノックする明日奈は中で唸っているのが聞こえるのでドアを開けて中に入る。
「晶君!どうしたの?」
「あっ!明日奈さん…」
ベッドの上で頭を抱えて唸っていたが明日奈から声を掛けられて正気に戻った。
「いつもの晶君に戻ったの?」
「分からない…最近ランダムで感情の起伏が激しくて、やがてもう1人の俺に乗っ取られるのが迫っているような」
「詳しく話してくれる?」
「実は…」
郷田はALOでラスボスまでクリアし精神不安定に至るまでの過程を明日奈に話した。
「大変だったわね、いい?晶君…私達は数日後ALOのバレン洞窟のラスボスまで行くからその時が来たら私の指示を聞いてね!」
「その時俺はどうすれば」
「アミュスフィアを被ってるだけでいいから、私が電話するからその時はお願いね!」
「分かった」
「聞きたいんだけれど、直葉ちゃんと別れたって本当?」
「…実はその時は微かに記憶があったのが、記憶が混乱してるので良く覚えてないんだ」
「……」
「明日奈さん…この状態が戻るには、アミュスフィアを被っていればいいわけだよね?」
「そうよ!だから私達に任せておいて」
「俺が直葉に悪い事したなら謝らないと」
「晶君…記憶が正常に戻ったらきっと今より辛い事になるわよ…」
「覚悟の上です、直葉に嫌われるのであれば甘んじて受けます」
「そう…ならばそれでいいわ」
窓に歩み寄り外を見る明日奈は懐かしそうに郷田に話す。
「晶君…幼い頃ここに来て遊んだわね…」
「そうだね…明日奈さんの親父さんと俺の親父は、当時よく行き来してたからね」
「私は晶君に言っておく事があるの」
「…?」
郷田に振り向きながら視線は下げるが、また外に向き直る。
「私…来年の春にアメリカに行くの」
「アメリカに?どうして?」
「家庭の事情かな…」
「その話しを和人さんにしたんですか?」
「この一件が終わったら言うつもりよ」

和人は病院へ行くためにバイクに跨りエンジンスタートした、
病院へ着くのに和人は思いを巡らせていた。
その頃病院の直葉はベッドで眠って夢を見ていた。

両親とテーブルを挟み食事してるのだが隣は誰もいない空間に直葉は会話している、また違うシーンでは剣道場で打ち合いをしてるがそこにいない人と打ち合いをしてる状態になっていた。
学校行く時に誰もいない空間に話しかけ楽しんで歩く直葉がいて、和人の部屋で誰もいない空間を抱きしめてる直葉がいた。
縁側でスイーツを喉に詰めらせそこから会話しているが誰もいない空間に話しかけていた、また和人の部屋ではベッドの上で誰かに抱きついているシーンが誰もいない人に抱きついていた。
(大丈夫かスグ!)

声をかけられて目を覚ました直葉は涙を流して和人を見つめていた。
「どうした?スグ…」
「夢を見ていて、それが誰と会話してるのか分からなくて…」
和人は自分の姿の記憶が直葉の記憶には無いのだと確信した。
「スグ…ごめんな…何も出来なくて」
和人も涙を流し直葉を見つめていた。
明日奈には涙を見せなかったが、直葉にはありったけの感情を見せている自分に気づく和人であった。

3
いよいよバレン洞窟に行く日になり直葉は病院のベッドでアミュスフィアを被り、郷田は自宅の部屋でアミュスフィアを被りどちらもリンクフリーにしていた。
金曜日午後9時キリトにアスナとレコンとシリカを連れて80層のセーブポイントに向かった。
目指すはサラマンダー領の高山地帯のバレン洞窟に。

80層に着いた4人は装備を整えて90層下部へ進むが、進むにつれて洞窟内が下に向かい階段状になっていた。
「これは何処まで続いているんだ?」
「分かりません、ただモンスターの気配が全く無いのが変ですが…」
洞窟の縁に沿って階段が螺旋の形で下っていて、中央には円柱が下まであって最深部が見えない。

階段を下って10mの所で平らな場所に着いた。
「これで行き止まり?」
「違うな…何処かに入口があるはず」
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