「熱を測るから、これを挟んでじっとしていろ」
「……ん」
「ちゃんと押さえておけよ」
「……うん、……」
「…………」
「……ん……」
「…………まだだぞ」
「うん、……」
「…………」
「……、……」
「…………、もう少し待て」
「ん、……」
「…………」
「…………」
「……、鳴った」
「うん」
「見せてみろ」
「ん、……」
「……、八度七分か……その割には元気そうだな」
「ん、……」
「……だからと言って、動き回るのは無しだからな。ちゃんと寝てろ」
「うん……」
「…………」
「……」
「……寝てるだけでは退屈か」
「……ん……」
「……、そうだな……」
「……、……」
「…………本でも読むか?」
「……!」
「……そうか。なら、何が良いか……」
「……」
「この前やった物は何度も読んでたな、……別の物を」
「……めふぃすと、」
「うん? ……何だ、読みたい物があるのか?」
「……ううん、……めふぃすとがよんで、」
「……何?」
「……おはなし、……ひとりでよむのいや……めふぃすとといっしょに、よみたい」
「…………」
「……、……だめ……?」
「…………いや、……分かった」
「……!」
「…………ハァ、……読んでやるから、先にベッドに行って待ってろ。……大人しくな」
「うん……!!」
――拾われた女の子の、消えてしまったかもしれない記憶の中の、小さな時の日常そのに。
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