ぶっく

□蜘蛛の糸に魅いられて
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「まーこと」


声がする。
オレの後ろで声が。


「まこと」


誰のだかはわかってる。


「なー、まこ、」


黙れよ。
黙ってくれ。


「まこ「うるせぇ、木吉!!」……ちゃうわアホ」


勢いよく振り返って怒鳴れば
そこにいたのは
オレとほとんど背の変わらない
糸目の少年。


今吉翔一だ。


「な、」


何でここにいんだよ。

オレは思わず言葉を失う。


ここは、霧崎第一バスケ部部室
基本的にバスケ部一同しか
入らない。


「へー、まだ来とんの?
鉄心は。」


基本的にはということは勿論、
例外があるわけで、

それが木吉鉄平だ。


奴は一年の時から
部活が休みの日には
甲斐甲斐しく霧崎へと
足を運んでいた。


うざくて、足を壊してやった
それでも会いに来やがる。


それも、オレに会いたいから。



「……なんであんたがいるんだ。」


オレは質問に答えろと
言わんばかりに、
今吉を睨み付ける。


「鉄心は良くてワシはあかんの?
……花宮に会いに来ちゃ。」


―黙れ。


今吉の笑みに嫌悪感を覚える
すべてが嘘臭くて
吐き気がする。


「黙れ。」

「なんで?
鉄心はええのに。」


―鉄心、鉄心、うるさい。


「アイツだって許可した覚えはない。」


―そうだ。
帰れと、いつも言ってる。


「……あー、もうええ。
質問変えるわ」


今吉の声が人をからかう
明るい声から、

もうええ、と、
何かを諦めたように
笑みを無くし、
ただ、感情のない言葉に変わる


「なんだよ。」


本当は聞きたくない。


だって、こいつの口からは
オレの心を揺さぶる言葉しか
出てこないんだから。


「なんだよ!」

オレは虚勢のためにも、
もう一度、今吉を見つめる。


「…………まだ、
鉄心のこと好きなんか?」

―まだ、

まだ、なんだって?

まだ……

まだてっしんのことすきなんか



すき?




まだ、すき?











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