ダンボール戦機(W)(WARS)
□思いは伝えなきゃ!!
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好きは言葉にしなければ相手に伝わらない
人間は臆病だ
拒絶されるかも知れないと思えば、簡単に口にするなど出来ない
でも、伝えないままなんて悲しいじゃないですか
「…」
ジンはとても困っていた
目の前には夕食に出されたトマト
手に付ける事すらせず、憎い相手を見るかのように鋭い目線を送り続ける
「ジン、食器片付けたいんだけど」
「もう少し待ってくれ、バン君」
もう少し、その言葉を何回聞いたか
少しだと言いつつジンの手はお皿に残されたトマトを見つめたまま動かない
はぁと溜め息をつく
一緒に暮らしてからジンがトマトが嫌いだという事を知った
「ダックシャトルの時はどうしてたんだよ」
あの時はジェシカが料理を担当していた
真面目なジェシカは残すなんて事を許さず、もし残せば毎日でも食べさせられていた
「こっそりヒロのお皿にうつしたり…」
「そんな事してたの!!」
まさかの事実に驚くバン
しかもヒロもそれに気付かなかった事にさらに驚きは大きい
「案外気付かれないものだよバン君」
「自慢する事じゃないよジン」
ジンの新たな一面を知ったバンだが、今はヒロもいなければバンの食器は既に下げてしまっている為、誰かのお皿にうつすなど不可能
目の前のトマトはジンが食べるしかない
再びトマトを睨むジンにいつまでもかかるのだろうと時計を見る
そう言えばバンも昔はピーマンが嫌いだった
でも今は普通に食べる事が出来る
どうして食べれるようになったのだろうか…確かあの時は
幼い記憶を思い返し、ジンの持つ箸を奪い取りトマトを掴んだまま
「ジン、あーん」
幼い子供にするように口元までトマトを持ち運ぶ
その行動にポカーンとしていたジンだがバンにあーんと言われれば無意識に口を開ける
口を開いたジンにそのままトマトを食べさせればあんなにも嫌っていた筈なのにモグモグと口を動かす
「偉いな、ジン」
良く出来ましたと頭を撫でてやれば嬉しそうに頬を赤く染めるジン
その姿を見ていたバンは、はっと今さっき自分がした事を思い返す
「ごっごめん、昔母さんがしてくれたからつい真似を」
18歳になったにも関わらず苦手なものを食べて頭を撫でるなどジンに失礼だったのではないかと焦るバン
しかしジンは首を左右にふり、バンの手を握る
「嬉しいよバン君、君から与えられたらトマトは何倍も美味しかった」
大袈裟だなぁと思う
だがけして嫌な気分ではない
こんなに小さな事でもジンに好きという感情を向けられて嬉しくない訳はない