突破記念小説

□生まれ変わっても会いたい
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超能力者と普通の人が敵対していた事など今は昔の話
お互いに分かり合い、協力を選んだ

そんな新しい未来を見届けた兵部京介は急に倒れた
薬やら超能力で長らえていた体に限界がきたのだ

「体は大丈夫か兵部」
「年寄り扱いは止めてくれないかい」
「実際年寄りだろ」

兵部のお見舞いに皆本が訪れる
以前なら有り得ない光景が今そこにある

「林檎剥いてやろうか、兎は好きか?」
「子供扱いするな!」

兎の形に林檎を剥く皆本
その姿を見ながら兵部は口を開く

「…皆本」
「う〜ん」
「僕はもうそんなに長くないだから君に伝えたい事がある」

平和になった世界で皆本は薫と結ばれるだろう
本当は伝える気など無かった
でもそんな皆本を想像したら苦しくて

「僕は…君が好きだ」

伝えられずにはいられなかった
少しでも皆本の心に兵部を残したい

「そんな事、今言うなよ」
「ご…」
「謝らなくていい!」

皆本に叫びが病室に響く
怒っているのだろうか
当然かも知れない、これから薫との幸せに水を差したのだから
だが皆本の言葉は予想外の事だった

「兵部…僕もお前が好きだ」
「っ!」

今皆本は何と言っただろう
好き?

「お前は最悪だ、そんな事言われたら諦められないじゃないか!」

泣いてるのか、ずっと下を向いたまま
スラックスにはポツポツと雫が落ちる
そんな姿を見たら…

「皆本っ諦めるな!僕をずっと好きでいて欲しい」
「っお前は最低だ!僕に苦しめって言うのか!!」

これから愛する者を失う皆本にそれはあまりにも酷だ

「なぁ皆本…生まれ変わりって信じるかい?」

兵部の言葉に顔をあげる皆本

「生まれ変わったら君を探すよ、だから待っててくれ」

兵部の目は真剣だ
転生しても記憶があるとは思えない
兵部も皆本も覚えていないかも知れない
だけど…

「…約束だからな」
「っあぁ」

過去に生きた兵部は皆本との未来を信じて
この世を去った
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