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□第三話
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「ねぇ...っ」

「このほこらは、なぜここにあるか知っているか?」


しゃべろうとしたらさえぎられた。
出鼻をくじかれ、何か言えなくなってしまった。


「10年前に人の子が建ててくれたんだ。...いや、
もともとこの場所に古びたほこらは200年前からあったんだけど。
とても優しい人の子だった...。」


雰風はきれいに笑った。


「10年前の冬までは毎日のようにきてくれていた。
どこに行ったのやら、はたりと来なくなってしまった。
歳のころはたしか...お前と同じくらいでよく面持ちが似ていたな。」


なんだろう、この人。妖怪なのに人間みたいだ。


「クーさんは、その人間がつれて来てくれた。猫又という妖怪とのハーフだ。」


...---にゃぁ


紅利幸の黄色とも金色ともつかない瞳がじっとこちらを見ている。
まどわされてはいけない。妖怪(やつら)は人の皮をかぶった悪魔だ。


         私が...やらなきゃ。
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