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□第四話
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雰風side


俺のほこらに近づいた見た目同じくらいの女の子。
森に入ったときからから感じた気配。人間のものと同じだが、それは普通の人間にしてはあまりにきれいすぎるオーラだった。
彼女を前にしてやはり陰陽師であることを確信した。

だが俺はそのことよりもっと驚くべきことがあった。
目の前にいる彼女だ。...似ている..あの人に。


  黒い髪  蒼く澄んだ瞳  漂う雰囲気


俺に名をくれ、クーさんを授けてくれた少年に...。
ずっとひとりで生きる希望を失っていた俺に太陽みたいな温かい笑顔を、光をくれた少年に。
もうずいぶん会ってないけど、できるならもう一度会いたい..。
会ってまた太陽みたいに笑うあなたの笑顔が見たい。


彼女は俺を見て大きく目を開き、急に冷たい絶対零度の雰囲気を出した。
そして俺に術で体を縛りあげ、クーさんはそんな彼女の行動に驚き、髪を逆立て威嚇した。


彼女は陰陽師。俺は妖怪。
敵対する二つの種族。彼女の判断は正しい。


それから彼女は扇嘉、母のことを問いてきた。
母といっても顔は知らず、名しか知らない。
今生きているのかすら...。
俺は生まれたときからずっと一人だった。あの人と出会うまでずっと...。
俺が話したら彼女は俺を掴み上げ怒りのこもった感情をぶつけてきた。

彼女の言葉からもれる『兄』の存在。
そして母...扇嘉はその彼女の『兄』を殺めてしまったこと。
怒りを現すにする彼女の瞳は、絶望の色を雑ぜていた。
澄んでいた蒼の瞳は暗く歪み、光を失っている。
俺は術を解きそっと彼女の頭を撫でた。
抱きしめ彼女を眠らせ、俺と会ったことの記憶を消した。
彼女は俺に会ったせいで悲しい過去を思い出し、絶望を感じてしまった。
それに少し胸がいたんだ。こんな思いになるのは、あの人に似ているからなのだろうか..。
彼女の瞳から流れ落ちる一筋の涙を拭い、彼女を抱き上げ歩き出した。

そのとき彼女はとても悲しい顔をしていた。



雰風side end----
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