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□第五話
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「いってきま〜す!」


昨日、なぜか森の入り口で眠っていたのだがケガもさく普通に学校に行く。


チリーン


「...ん?鈴の音..。」


にゃぁ..--


足元を見ると、黒猫がいた。


「猫だぁ。かわいい!」


しゃがみこみ頭を撫でてあげると気持ち良さそうに目を細めた。


「あっいけない!ごめん、じゃーね!!」


猫から感じた温かい匂いがなんだか懐かしく思えた。



「ねぇねぇ紫苑!さっきね、かっこいい人見つけたんだ!」

「かっこいい人?」

「そう!何組かわかんなかったけど、すっっごくかっこ良かった!」

「見間違えなんじゃないの!ウチの学校にそんなかっこいい人いないって、瑠依。」


瑠依は、紫苑の親友でハイテンションが売りの女の子である。


「ほら、帰るよ。」

「はーい」


途中の曲がり角までは同じ帰り道。
そこまでしゃべりまで歩いた。


「じゃーね、また明日。」

「うん、バイバイ。」


チリーン


また、鈴の音が聞こえた。
今朝通った所と同じ場所で。音の発信源を見やると、今朝の黒猫と一人の青年がいた。
青年が黒猫の頭を撫でていた。


「その子、あなたの猫ちゃんなの?」


声をかけたら青年が驚いた面持ちで振り返った。


「そうだが..」

「すっごく人懐っこいよね。かわいい!」

「あっ、ありがとう。」


服装が紫苑の学校の制服と一緒だった。


「その子の名前、教えてくれる?」

「クーさんっていうんだ。俺の大事な友達だ。」

「そっかぁ。」


青年の隣にしゃがむと、紫苑もクーさんに手を伸ばした。
のど元を撫でるとゴロゴロと鳴いた。


「私、天羽 紫苑っていうの。あなたは?」

「明喜人...」

「明喜人くん?..いい名前だね。」


そう言うと明喜人のこわばった顔がわずかに緩んだ気がした。


サァーーー...


風が強く吹いた。砂埃がたち、思わず目を閉じた。


「すごい風だね...ッ!?」


風が止み、目を開けると明喜人とクーさんの姿はなかった。


「あれ?いない...(不思議な子だなぁー)」


紫苑がさっきまで明喜人とクーさんがいたところをしばらく見つめていた。
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