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□第六話
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--翌朝--
「....。」
紫苑は机に置いてある鈴を手に取り見つめたていた。
「....。(明喜人くん、あなたは一体何者なの?
私がみたあの夢と、何か関係があるの?)わからないよ...」
眉をハの字に曲げた紫苑の表情は、不安と困惑で歪んでいた。
そのとき部屋の外からアルト音が聞こえた。
「姫!朝ですよ起きていらっしゃいますか?朝食の準備ができております。」
「!...はーい、今行く!」
紫苑は制服のポケットに鈴をしまい、部屋を後にした。
「おはようございます。姫。」
「だーかーらー、その呼び方やめてってば!普通に呼んでよ、大河!」
リビングで紺のエプロンつけ朝食の準備をしている男の子がいた。
先ほど紫苑を呼びにきた声の主はきっと彼だろう。
短い黒髪に深い新緑の瞳。手首には青と緑のミサンガをつけている。
彼の名前は、琥紅桜 大河。紫苑の二つ上で紫苑の側近を務めている。
琥紅桜家は、代々天羽家に仕える血筋。
生まれてからずっと剣術,空手などの武道を極め、十歳になると天羽家にいき当主を守るために尽くす。
これが琥紅桜家に与えられた使命である。
天羽家を訪れ、紫苑の側近なってずっと今まで見てきた。
紫苑のことを「姫」と呼ぶのは自分の立場を思ってのこと。
それともうひとつ、大河の中でずっと渦巻いている思いを隠すため....