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□第七話
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「ハァ..ハァ..」
『明喜人、大丈夫なのか?呼吸が..』
「んっ..心配するなクーさん。それよ、り..鈴は、」
『あの娘(紫苑)が持っている。大事そうにいつも身につけていたよ。』
「そうか。...ハァ..」
苦しそうに息をする明喜人だが髪が金で目が赤い。本来の姿、雰風に戻ろうとしていた。
ぐっと息を吸い込み、本来の姿に戻る。
「もどっ、た..」
『無理をしすぎだ。なぜ燐以外の人間に手をかける。』
「なぜだろうな、俺にもわからない。」
そっと祠に手をついた。
雰風の腕から背中にかけてひっかいたような傷がある。
本来ならすぐ治るはずの傷なのに、そこからはまだ血が流れていた。
彼は食事をとっていない。
10年前からなにもだ。普段生活するには必要のないものだが、このようなときに痛手がめだつ。
ガサッ
「.....。」
草陰がゆれる音がし振り返って見るとそこには雰風とそっくりな一人の女がいた。