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□第三話
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「固(こう)!」


ズザザザザ!! ザシュッ


紫苑が印をつくり、そう唱えると札のようなものが雰風の体にまきついていく。
最後には、目と口しか出ていない状態になった。


チリーン..


『貴様!何のつもりだ!!』


シャーッと毛を逆立てて、紅利幸が威嚇をしている。


「...いい、クーさん。怒るな。この子は陰陽師だ。妖を退治するのが仕事だ。
...して、しゃべれるようにしたということは、何か聞きたいことでもあるのか?」

「素直に答えて。...扇嘉という妖は知ってる?
同じ九尾の妖よ。九尾の数なんて知れたこと、教えて。」

「....扇嘉..。まぎれもない、我が母の名だ。
それがどうした。」


プツリ..何かが切れる音がした。
紫苑は札まみれの雰風の胸ぐらをつかみかかった。


「あなたのお母さんのせいで、お兄ちゃんが!!
お兄ちゃんが死んじゃったんだよ!?あんたのせいでッ..!!」


やりきれない怒りはいつしか己へと雰風へと変わっていった。
あの時、自分があんなことをしなければ...。
雰風がその場にいたら...。
そう考え出したらキリがなくて、絶望しか見えなくなった。


ふと頭を撫でられる感覚がした。
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