その他の中編

□天国からの訪問者
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『四木さん、赤林さんをどうにかしてください』




某所、テラスの素敵なカフェで私は四木さんに訴える。
勿論赤林さんのことだ。




「どうにか出来るのなら私が知りたいですよ」




静かに四木はコーヒーカップを持ち上げ、甘さなど一切感じさせない真っ黒い液体を体内へ流す。



「それより名無しさんさん、こんなところを赤林さんにでも見られたら危ないんじゃないんですか?」


『うっ』





男の名前を出しただけで嫉妬する赤林さん。
当然男と二人っきり、そんなこと許す筈がない。
きっと先日のように壁に追い込まれ、問い詰められるに違いない。






『…正直な話、私と赤林さんって…その…恋人同士でしたっけ?』




自分にもわからず、名無しさんは他人である四木に聞いてみる。
四木は表情を崩さず、ゆっくりとカップを元の位置に戻す。




「私は少なくともそういう関係とは聞いたことありません」



『ですよね、私も聞いたことも思ったこともありません』




人に言われ、改めて名無しさんは実感する。
そう、私は赤林さんの恋人でも妻でもない。





『こんなに縛られる理由なんて一つもありませんよね?』



「そうですね」



『どうすれば良いですか』


「適当に相手を見つけたらどうでしょう?居ないんですかそういう相手」


『いや、多分赤林さんのことだから…』


「殺しそうですね」


私が答える前に、四木さんは公共の場など考えす物騒なことを言う。
まぁ私も同じこと言おうとしましたけどね。



『もう引っ越すしか…』と冗談ではなく真面目に悩み始めると。



「きっと折原さんに聞くでしょうね、どんなに多額な金額を払ってでも」



『お、折原さん…』




ホントあの人の情報量はすごい。ありとあらゆる情報を脳に詰めている。
しかし今こんなにもその膨大な情報を厄介だと思ったことはない…。




「ですが、折原さんもきっと赤林さんと同様。歪んだ感情をあなたに向けているでしょう。だから敵である赤林さんにそう安々と美味しい情報を渡すとは思いません」





四木さんも赤林さんと同じこという。
だから何で折原さん?





『それお赤林さんにもいわれました。皆して折原さん折原さん』



「あなたは本当に鈍い。あんなに分かりやすい愛情表現が感じれないなんて、それに関しては赤林さんと折原さんの二人に同情しますよ」



あの二人に同情…?
おいおい、流石にそれは言い過ぎでしょう…。




『…………・まぁ良いです。今は折原さんはどでも良いんです。赤林さんをどうにかしてください』





「諦めなさい」










そう言い捨て、四木さんは残っているコーヒーを全て飲み込んだ。





















(良いじゃないですか、赤林さんの遺産目当てで結婚すれば)
(あの人はいつ死ねるんですか?)
(きっと貴方が死んだらでしょうね)
(それ意味ないんじゃ…)
(それじゃあ、私はこれから仕事なので)
(四木さん!!!!!!)









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