ブラコン:長編

□今日は僕だけの
3ページ/5ページ




「名前〜」




待ち合わせ場所に着くと、名前より先に琉生が待っていた。
名前は急いで琉生の元へ。



『ごめんなさい!待ちました?』



「ううん、大丈夫・・・じゃあついて来て・・・」それだけ言って流生は当たり前かのように、名前の手を握る。



ーー・・・?



名前も琉生の手を握り返し、黙ってついて行く事に。




ーー・・・何処に行くんだろう?













***









『美容室・・・?』




琉生に案内された場所はお洒落な美容室であった。
店内は太陽にも似た白色で、眩しかった。お店の中では数人の若い男女が・・・。




「うん、僕が働いてる場所・・・」



『そういえば・・・』



確かに美容師だというのは頭の隅に・・・。
でも、何で私がここに?



「でね、頼み事っていうのわね・・・」



琉生は何処から雑誌を取り出した。
それを名前に見せ、もう一言。




「来月にね、その雑誌にうちの美容室が取り扱われるの・・・でね、良かったらモデルになってくれない?」




『え?』




名前はもう一度雑誌に目を移し、また琉生を見る。




『わ、私ですか・・・?』



人差し指で自分を指す、嫌な汗がタラリとこめかみから流れる。
流生はコクンと頷く。




『・・・私じゃなくても、他に良いモデルさん・・・』



「・・・他の人より名前の方が雰囲気合ってる・・・」



琉生の言葉はいまいち理解できず名前は眉を下げる。



ーー・・・雰囲気?



「嫌・・・?」



とても切なそうな顔をする琉生、名前の胸にドスッと罪悪感が刺さった・・・。





ーー・・・そんな顔しないでくださいよ・・・。






『わ、分かりました・・・。お願いします』



潔く名前は諦めると、琉生はパアアと背後に花を咲かせ嬉しそうに笑う。




「じゃあ髪の毛セットするから、こっち座って?」




琉生はクルリと手前の椅子を名前の方に回す。







ーー・・・まぁ良いか。琉生さん嬉しそうだし・・・。



これも恩返しだ、と自分に言い聞かせ名前は椅子に腰を下ろす。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ