ブラコン:長編
□今日は僕だけの
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「名前〜」
待ち合わせ場所に着くと、名前より先に琉生が待っていた。
名前は急いで琉生の元へ。
『ごめんなさい!待ちました?』
「ううん、大丈夫・・・じゃあついて来て・・・」それだけ言って流生は当たり前かのように、名前の手を握る。
ーー・・・?
名前も琉生の手を握り返し、黙ってついて行く事に。
ーー・・・何処に行くんだろう?
***
『美容室・・・?』
琉生に案内された場所はお洒落な美容室であった。
店内は太陽にも似た白色で、眩しかった。お店の中では数人の若い男女が・・・。
「うん、僕が働いてる場所・・・」
『そういえば・・・』
確かに美容師だというのは頭の隅に・・・。
でも、何で私がここに?
「でね、頼み事っていうのわね・・・」
琉生は何処から雑誌を取り出した。
それを名前に見せ、もう一言。
「来月にね、その雑誌にうちの美容室が取り扱われるの・・・でね、良かったらモデルになってくれない?」
『え?』
名前はもう一度雑誌に目を移し、また琉生を見る。
『わ、私ですか・・・?』
人差し指で自分を指す、嫌な汗がタラリとこめかみから流れる。
流生はコクンと頷く。
『・・・私じゃなくても、他に良いモデルさん・・・』
「・・・他の人より名前の方が雰囲気合ってる・・・」
琉生の言葉はいまいち理解できず名前は眉を下げる。
ーー・・・雰囲気?
「嫌・・・?」
とても切なそうな顔をする琉生、名前の胸にドスッと罪悪感が刺さった・・・。
ーー・・・そんな顔しないでくださいよ・・・。
『わ、分かりました・・・。お願いします』
潔く名前は諦めると、琉生はパアアと背後に花を咲かせ嬉しそうに笑う。
「じゃあ髪の毛セットするから、こっち座って?」
琉生はクルリと手前の椅子を名前の方に回す。
ーー・・・まぁ良いか。琉生さん嬉しそうだし・・・。
これも恩返しだ、と自分に言い聞かせ名前は椅子に腰を下ろす。