短編

□右見て左見て
1ページ/1ページ




「●●●、危ない」





黒尾の声と共に私の体は後ろに引かれた。



『えっ!?何々!?』




バッと首をぎゅるりと回し背後に立っている黒尾を見る。



「信号赤、お前車に突っ込もうとしてたぞ」



『嘘・・・、えー・・・分かんなかった・・・ふわぁ・・・』





台詞の最後に大きな欠伸を1つもらす●●●。


「寝不足?」


『んー、もうすぐテストだから最近徹夜続きで勉強やってて・・・ふわあぁ』


先ほどより大きく口を開き、欠伸を1つ。目には大粒の涙が溜まる。
黒尾はあきれた様に首を横に振り、ため息を1つ。




「勉強に励むのも良いけど、死んだら意味ねーだろ」



黒尾の手が●●●の両頬を掴み、「アヒル口〜」とおちょくる。



『・・・ん!ひゃめてよ!!!』



「何言ってんの〜?」ヘラリと笑い、黒尾の指が●●●の両頬をムニュムニュと弄る。



『こんの・・・!!!』





ぎゅっと拳を作り、力いっぱい黒尾の胸目掛けて振りかぶろうとした途端。













ぺろっ






















「しょっぱ〜」








パッと黒尾は●●●から手を離し、青に変わった信号を確認し呆然とする●●●を無視し歩いた。




ーー・・・なななななななななななっ!?







まだ微かに目頭には生暖かい感覚が。そこにはもう涙一粒も残っていなかった。
先ほど、僅かな時間ではあったがベロリと何かが触れた。


















「●●●ー!早く行くぞー、また信号赤になんぞー」






ニッとアチラで待っている彼。
その笑みはどこか挑発的で、してやったりと目が語っていた。













「勉強も良いけど、俺も相手してくれよー」







『一生するかっ!!!』
































[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ