短編
□宇宙人飛行士を愛した宇宙人
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『笠松さん』
一言、彼の名前を呼んでみると。
彼は少しめんどくさそうにしながら、返事してくれた。
「んだよ」
『何してるんですか?』
「見れば分かるだろ、明日の練習メニュー書いてんだよ」
女性が苦手だということで有名な彼。
しかし、私に対しては全然だ。顔を赤らめることもしなければ暴言を吐く始末。
一度で良いからその頬を朱に染めたいものだ。
『手伝いましょうか?』
「バスケのルールも知らないくせによく言うぜ」
『知ってますよ、玉の取り合いですよね?』
「もう帰れお前」
『冗談ですってば』
「たくっ…お前も物好きだな」
『何がです?』
「暇だろ、バスケにも興味ねぇしかも話し相手は俺。他にもいるだろ、顔だったら黄瀬や森山だっているんだぞ」
なんなんだ、と彼は呆れたように頭をガシガシと掻(か)いた。
どうやら、私の本来の目的を彼は気づいてないようだ。
『私、笠松さんに会いに来てるんですよ?』
「はいはい…………………………………え!?」
それまで一切私に見む気なかった彼は驚いたように私を見つめた。
『黄瀬くんや森山さんもカッコ良いとは思います、でも堅物で融通が聞かなくて無愛想な笠松さんが好きなんです』
「なっ…おまっ、正気か…?」
珍しいことに彼の表情から冷静さが消えた。
目を見開き、わなわなと震えだした。
どうせだったら、赤面した笠松さんが見たかったかな…。
しかし、告白しても駄目かぁ。なかなか手強い…。
『ねぇ笠松さん』
ジッと私は笠松さんから目を外さず。
真っ直ぐ言い放った。
『笠松さんはどうしたら私のことを見てくれますか?』
遠くの人を好きになりました。
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