黒子のバスケ:長編

□エゴイズムな隣人
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「名前ちゅわーん!!」








空が夕焼けに色を染めた頃、もの凄いテンションの森山さんが現れた。

何も見なかった事にしようと静かにドアを閉めようとしたが、ガッと森山さんがそれをさせようとしない。




「会いに来ちゃった♡」





にこやかと笑顔を向けてくれるが、掴まれているドアはミシミシと叫び声をあげていた。
そんな細い腕にどんだけの力を隠してるんですか…。
私は諦めてドアノブの力を緩めた。森山満足そうにありがとう、と笑む。



『えっー…と、何か用ですか?』


「八割…いや、九割は名前ちゃんに会いに来た、あと一割はこいつの紹介」




森山は背後にいた一人の男を指差す、その男を見て名前はえ、と声をあげた。





いやいや、なんで?





そこには雑誌やテレビでしかみたことのない顔。





「その反応は知ってるんだね?まぁ顔だけは有名だしね」



「何スか、それ嫉妬っスか?」


「お前なんかに嫉妬しねーよ。……で、名前ちゃんもう知ってると思うけど一応紹介するね。こいつは黄瀬涼太宜しくしてやって」


「どもっス、名前。話は色々と森山先輩から聞いてるっス♪」




話…?森山さん何か変な事言ってないよね…?




『あ、こちらこそ…』



「名前ちゃん、こいつ君と同い年だからそんな改まらなくてもいいよ。つかバシバシこき使っても良いレベルだから」


「そんな笠松先輩みたいなこと言わないでくださいっス」


「うっるせー、つかお前この前週刊誌にルリちゃんと写ってたみたいじゃないか。羨ましい死ね」


「死ね!??てか、あれはただ食事に行っただけっス」


「ハッ、どーやら。まぁ俺には名前ちゃんというラブリーな彼女がいるからいいけど♡」




二人の会話を聞いていると、どれだけ仲が良いのか分かる。
まぁ内容こそは少々物騒だけど、仲が良いからこそだと思う。
あと、森山さん私は貴方のラブリーな彼女になった覚えはありません。




「じゃ、お邪魔しまーす」




『えぇ!?ちょっと、森山さん勝手に入らないでくださいよ』




さも当然のように森山は靴を脱ぎ部屋に上がろうとする。
迷いのない行動に名前はワンテンポ遅れて反応する。



「だって、外で話てるのもなんだし?まぁ氷室達も交えて話そーよ」



『今日は氷室さん達は居ませんから、またの機会に』


「うっそ!?あいつら居ないの?じゃあ好都合!改めてお邪魔しまーす」




『も、森山さんーん!!』




名前の攻防も虚しく、猫のようにスルッと部屋の中に侵入する森山。
手を額にあて、ハァとため息をつく名前。ポツンと外に置いて行かれた黄瀬に『どうぞ』と部屋に誘う。
黄瀬は苦笑いし「お邪魔します」と靴を脱いだ。




○✖□





『森山さんと黄瀬くんは同じ高校だったんですよね?』


「うん、こいつを初めて見た時クソ生意気な後輩来ちゃったなーって思った」


「そんなこと思ってたんスか!?」


「多分他の部員も思ってたと思うぞ」



遠慮のない森山さんの攻撃がグサッと音をたて黄瀬くんの胸に刺さった。
まぁ、仕方ありませんけど…。と黄瀬はなんとか持ちこたえた。しかし目にはうっすらと涙が溜まっていた。





『で、でも。聞きましたよ!森山さん達がいた海常ってかなりの強豪だったんですよね?』



「まぁそうは言われてたけど、高尾や氷室がいた学校だって凄かったよ?」



意外にも謙虚な森山さん。
そういえば高尾くんと氷室さんの高校時代の話を聞いたことないなー…。




『そうなんですか・・・?』



「高尾がいた秀徳なんて遠距離シュートの化物の緑間なんていたしね、あんな綺麗なシュートは何度見てもゾクリとしちゃうね」





“緑間”…以前高尾くんの口から聞いたことのなる名だ。
どうやら本当に凄かったらしい。





「それに氷室がいた陽泉の紫原って言ってな、それがまたすっごいデカいの、確か2m越えだったかな?」




『に、2m?おっきいですね…』


「ありゃただの壁だよ」


『それは見てみたいような見たくないような…』




見たいという好奇心はあるが、いざ目の前にしたら怖いだろう…。
今度氷室さんに聞いてみよう…。




「まぁ緑間や紫原については俺より黄瀬の方が知っているよ」






な?と隣で未だに痛むのか胸を抑え涙目の黄瀬に話をふる。






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